2020年12月10日木曜日

岩井俊二「ラストレター」(2020)

岩井俊二原作脚本監督の「ラストレター Last Letter」(2020 ロックウェルアイズ・東宝)を見る。製作は市川南、山内章弘という東宝映画。企画プロデュース川村元気が噛んでいる。
キャストが豪華。松たか子、福山雅治、広瀬すず、神木隆之介、この4人をそろえられただけでも奇跡。

松たか子が実家(田舎の大きな家)で自殺した姉(広瀬すず)の法事。この姉が病気の末の自殺だったらしい。
2020年を生きる我々は自殺しそうにもない人でも前触れなく自ら命を絶つことがあることを痛いほど知っている。

松たか子の高校時代を森七菜が演じてる。そして死んだ姉の子を広瀬すずを演じてる。松の幼少時が森七菜で、松の娘が森七菜。そのへんを飲み込むまでちょっと戸惑う。

法事を終えて仙台の家に戻る。この家もでかい。この映画、ドローン空撮映像をやたら多用してる。ここ数年の流行り。ドローン映像も岩井俊二が撮ると何か他と違う。

漫画家の夫がなんと庵野秀明。この人、昔よりは演技が上手くなってる気がする。この夫がよほどの人気漫画家か資産家一家っぽい。次の作品に必要だからと思い付きで妻に断りもなくでっかいアフガンハウンドを2匹買ってきたりする。母もお金持ちっぽい。
美咲へ同窓会の案内が来ていた。同窓会で美咲と連絡が取れないとざわついてる。そこに妹の松たか子が行く。同級生で現在は作家の福山雅治がそこにいる。松がなぜか姉が故人となってることをなかなか言わない。それどころか姉のフリして同窓会に参加し続ける。なんで?そこで姉の卒業式スピーチを録音したカセットテープを聴く。

家が遠いからと同窓会を途中早退。バス停のベンチに座ってると福山がやってくる。連絡先を交換。ここでも松さんは姉のフリ。こいつは一体何をやってる?夫よりあきらかにカッコイイ福山に恋心?なんか、三谷脚本で見るような松さん。え、これってコメディ映画だったの?

福山「君にまだずっと恋してる」ざわざわ…。夫に浮気を疑われる。松さんはなぜか東京の福山のボロアパートへ一方的に手紙を書き送る。こちらの住所を書かずに。
あれ?松さんの母親役で木内みどりさんが出てる。そうか、この映画を撮った後に急死したのか。

福山は卒業アルバムから松の実家に手紙を出す。姉のふりしてるのだから当然松さんには届かない。「あれ?お母さんにだ」と娘広瀬すずが開封。もちろん要領を得ない。「この人、霊界と文通してる?」すずサイドも死んだ母に成り代わって返事を書く。ますますややこしいことに。みんないたずら心の度が過ぎる。

福山の高校時代が神木隆之介なのだが、生物部で松(森七菜)と接点を持っていた。やっぱちょい恋心だったんじゃん。姉妹と神木の三角関係だったんじゃん。

松さんの義理の母がぎっくり腰で運ばれる。男性宅から。え、相手だれ?
高校の英語の先生に手紙を添削してもらってた?この男性の手紙も松さんは代筆する羽目に。みんながみんな、手紙を書く。この映画、あたふたする松たか子さんが異常に可愛らしいw

コメディだと思って見てたけど、DVダメ男に人生狂わされて自殺した姉という社会派要素も。
そして、松の姉広瀬すずが美人生徒会長。現代の娘広瀬すずも異常にカワイイ。浴衣姿と夏服姿がまぶしい。広瀬すず目当てで見ててひいき目もあるかもしれないけど、すずは同世代で別格の実力者なんだなあと強く感じる。

すずを自殺に追い込んで悪びれない豊川悦司のシーンがすごく嫌。社会の最底辺。日本のどこかで同じような辛い目にあってるかもしれないすずのことを考えてつらくなる。
女の子はぜったいにダメ男と関わってはいけない。簡単に付き合ってはいけない。しっかり見極めてからじゃないとつきあってはダメという教訓。

廃校でかつて好きだった人の娘に出会うとか想像しただけでヤバい。このシーンは見てる自分も同じ気持ちになって「えぇっ?!」って声が出た。
教室と放課後がユートピア。高校時代が一番輝いてたなっていう悲劇。
神木くんも福山と同じ表情しててすごいなって思った。森七菜もとても自然な演技で感心。
岩井俊二が映像作家としてさすがだった。

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