2020年12月23日水曜日

ペンタゴン・ペーパーズ / 最高機密文書(2017)

スティーヴン・スピルバーグ監督の「ペンタゴン・ペーパーズ / 最高機密文書」(2017 20世紀フォックス、ユニバーサルピクチャーズ)をやっと見る。主演はメリル・ストリープとトム・ハンクスの初共演コンビ。しかも音楽がジョン・ウィリアムズ。日本での公開は2018年。配給は東宝東和。

原題は「The Post」。邦題とまったく違う。ベトナム戦争の国防総省最高機密文書をめぐるジャーナリズム史実映画。
自分、わりと近現代世界史の事件とかトピックとかよく記憶してるほうだと思っていたのだが、この映画で取り扱われている「ペンタゴン・ペーパーズ」については何も知らなかった。なのでしっかり見る。

1966年、どしゃぶりの雨のベトナムの密林。大使館嘱託軍事アナリストのエルズバーグ(長髪で米兵らしくない)は自らも銃を構えて米軍に同行。そこに敵から攻撃。砲弾と銃撃戦。若い兵士が次々と倒れる。エルズバーグはエアフォースワン機上でマクナマラに戦況は泥沼と伝える。だがマクナマラは記者たちの前では笑顔で戦況の改善をアピール。
で、エルズバーグは最高機密文書をランド研究所から持ち出しコピーし保管。米歴代政権のベトナム支援の歴史をおさらい。

1971年、ワシントンポストのキャサリン・グラハム(メリル・ストリープ)は社主として株価の件で銀行の偉い人と会うために内容をおさらい中。
そしてワシントンポスト編集主幹ベン・ブラドリー(トム・ハンクス)と朝食。ニューヨークタイムズのやりて記者ニール・シーハンの引き抜きについて話題。大統領の娘の結婚式や政府と新聞記者の内幕なども話題。売り上げが落ちている。政府を怒らせたくない。この社主はあまり頼りにならない経営者のようだ。ワシントンポストは家族経営の地方紙?!

そうこうしてるうちにNYタイムズのシーハンがペンタゴン・ペーパーズについて何かつかむ。トムハンクスはインターンをNYにやってシーハンが何をしてるか探らせる。「合法ですか?」アメリカはこの時代からコンプライアンス意識が若者にもしっかり浸透してて感心。だがこのインターンも記者のはしくれ。イカサマもやってて感心。

で、NYタイムズにニール・シーハンの「ペンタゴン・ぺーバーズ」スクープ記事。「マクナマラは6年前に戦争は勝てないと知っていた」
その一方でワシントンポストは大統領娘の結婚式記事が一面で頭を抱える。トムハンクス「文書を手に入れろ!」
一方でケイは「歴代政権とお友だちしてただけなのかよ!」と娘から嫌味を言われる朝。
NYタイムズとワシントンポストってこんなライバル関係だったのか。

ベンはケイに「マクナマラに文書を渡すように言え!」と詰め寄るのだが、友人を追い詰めたくないと拒絶。「新聞と国民への義務はどうなんだ?!」「あんただってJFK親しかったとき批判しなかったじゃない!」みんな偉くなれば歴代政権とズブズブ。

バグディキアンが情報源をランド研の線で探っているうちに編集部にヒッピー女がやってきて靴箱に入った書類を置いていく。「ジーザス!マクナマラ文書の一部か?」これでワシントンポストも試合復帰だ!

だが、またしてもNYタイムズにスクープを抜かれる。
しかし、タイムズには政府から連邦裁命令経由で出版差し止め。そむけば法律違反。
「文書を漏洩した奴を起訴したい」「タイムズは敵だ。法的手段に訴えてやる。」これはなんだ?後のウォーターゲート事件でも脚光を浴びた大統領執務室の録音テープか?(そもそもなんでニクソンはそんな自分に不利な証拠になるようなものを残した?)

ワシントンポストも出版できないのだが、バグディキアン記者が手当たり次第に電話してエルズバーグと接触成功。ベンはケイからの忠告も聞かず、新聞屋としての闘志を燃やす。

戦争継続中の国家機密漏洩の取り扱いがテーマ。政府VS新聞社。アメリカでかつてこんなことが?!「政府のやり方はまるでコミュニスト!」共和制の歴史上はじめての事態。

この映画、ずっと新聞社の編集主幹たちと法務部の深刻な話し合い映画。年齢層お高め。その点で大人が見るべきオトナ向け映画。新聞の活字の組まれる様子とか、GOサインが出てから輪転機が回り出す様子も興味深かった。

新聞社として、経営者として、その時どうすればいいのか?社が消えるかもしれない。それでも社会への使命を果たしたワシントンポスト、およびNYタイムズは偉大。

歴代大統領はみんなうそつき。アメリカの若者は敗戦という不名誉を避けるために戦場へ送られた。ニクソンは今でも合衆国最低の大統領。

だが、闇があってもこんな英知と栄光があるのもアメリカ。そこが中国、ロシアとは違う。国民の知る権利と正義は市民が守る。報道の自由は報道が守る。マスコミが政権と親しくなってはいけない。

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