2020年12月19日土曜日

五社英雄「女殺油地獄」(1992)

五社英雄監督の「女殺油地獄」(1992 フジテレビ・京都映画 / 松竹)を見る。
五社監督最後の映画。今も活躍中の俳優が多く出演してるので見る。

原作はもちろん近松門左衛門(1653-1725)の世話物。大阪が舞台。人形浄瑠璃から歌舞伎になり、これまでに何度も映画化もされている。だが自分はどんな話か知らない。映画で知った気になろうっていう。
自分、これまでの人生で一度も近松門左衛門の作品に接したことがない。ライブ見に大阪へ行ったとき、そこに曽根崎という地名を初めて見て「ほんとにあるのかよ!」と驚いたw

豊島屋お吉を樋口可南子さんが演じてる。おそらく33歳ごろ。(ということは今のまさみと同じ年ごろか!)
正直自分はこの人をソフトバンクのCMぐらいでしか見たことないw 今回ほぼ初めて映画女優として見た。

お吉殺害現場を同心与力たちが調べてるシーンでこの映画は始まる。カメラがぐるぐる現場を回るように撮っていく。正直何が起こっているのかよくわからないカットだ。

河内屋与兵衛が堤真一。こいつが油屋「河内屋」を飛び出した放蕩息子。自堕落で自暴自棄で粗暴。この俳優はこんな昔から主演クラスの人気俳優だったって知らなかった。若い。今とほぼ同じ演技をしてる。
与兵衛が手をつけるちょっと頭の弱い感じの娘小菊が藤谷美和子。この人は80年代から90年代にかけて人気女優だったらしいのだが自分はほぼ初めて見る。この映画では小菊は同業油屋組合いちばんの大店小倉屋の娘という設定らしい。ちょい長濱ねるに似てる。

自由恋愛など許されない時代に与兵衛と寝てる現行犯。与兵衛は縛り上げられ小倉屋の主人と番頭たちに叩かれる。河内屋の看板を掲げさせないと脅される。不良息子のせいで店は修羅場。そんな与兵衛を幼い頃から面倒見てたお吉はかばう。

与兵衛は小菊と別れる気はまったくない。小菊を殺して死ぬ!心中や!とわめく。お吉はそんなことは許さないと説得。
与兵衛は刃物も持ってる。なんと迷惑なバカ野郎。あれ?この話、与兵衛、お吉、小菊の三角関係痴情のもつれの末の殺人事件?

小倉屋(長門裕之)の妻がお歯黒しててちょっとびっくり。最近の大河ドラマとかではあまりお歯黒シーンにお目に掛かれない。

与兵衛は小菊をさらって逃げる。この時代は心中が流行り。
ヤクザみたいな顔の怖い番頭たちが追いかける。与兵衛の子分たちにも乱暴。この時代の同業組合ってこんななのかよ。

江戸時代の大店の一人娘の嫁入りってすごいなと思った。嫁入り道具が豪華。江戸時代の大阪の富裕層の婚礼風景が初めて見るような映像だった。今も名家はこんななのかもしれないけど。
あと、油を搾る風景も見たことない映像だった。いろいろ貴重なものを見れた。
藤谷美和子の御高祖頭巾姿もドラマではあまり見たことないものだった。与兵衛がぶたれるのを見てヒャッという驚く表情とか、忍んで逢ってきた帰りをお吉に見つかったときのバツの悪い表情とか、藤谷美和子の演技も素晴らしいと感じた。(近年の映画やドラマの演技はマンガの影響でデフォルメが強くおおげさすぎ)

さらに上を行って樋口可南子さんが艶やかだった。性悪女同士の精神的マウントの取り合いシーンが良い。足を踏む女の戦いシーンが良い。
江戸時代の鏡の感じもリアルだった。松嶋尚美が出演してて驚いた。

昔も今も新聞三面記事は本質的に変わりないなって思った。粗暴なヤクザ男と関わると周囲の者はえらい迷惑をこうむる。
けど、お吉も自業自得。男も女もみんなアホ。悲劇に至る男女の情念をしっかりねっとり描いていた。見るべき映画だと感じた。オススメする。

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