2020年12月12日土曜日

A.A.ミルン「赤い館の秘密」(1921)

「くまのプーさん」で知られるA.A.ミルン(1882-1956)が書いた唯一の推理小説「赤い館の秘密」(1921)を読む。山田順子新訳2019年創元推理文庫版で読む。
THE RED HOUSE MYSTERY by A.A.Milne 1921
この時代の英国ミステリーはもれなく田舎の館が舞台。「赤い館」の主マーク・アブレット氏は牧師の子に生れたのだが資産家婦人の資産を相続。金持ちとなって「赤い館」を購入。

15年前にオーストラリアに行った兄ロバートとは不仲でたまの手紙はお金の無心。この5年館にも来ていない。マークは朝食時に午後3時に兄がやって来ることを客たちに知らせる。

客たちがゴルフに出かけている間に粗暴そうで人相の悪いロバートはやって来た。メイドが客を待たせて主人を探していると館内から銃声。ドアを開けろと怒鳴る声。

この館に滞在中のベヴァリーを訪ねて来たアントニー・ギリンガムくんが主の秘書と一緒に事務室の窓から入って死体発見。だがマーク氏の姿がない。
ギリンガムくんはお金に困ってない。母の遺産から毎年400ポンドの収入があるのに人間観察のために職を転々としている。いわゆる高等遊民?殺人事件に出くわしたことを機会に探偵になってみようかと。

マークの従弟で秘書のケイリーが何かを隠してるとにらんだギリンガムくんとベヴァリーは仲良く一緒に捜査開始。ホームズとワトソン、ポアロとヘイスティングズのよう。
この小説は登場人物が少ない。中盤で容疑者をほぼ絞り込める。

警察が沼浚いをしてる間、ふたりは図書館の秘密通路を発見。怪しい動きをするケイリーを観察し始める。
退屈な聴き込み調査とか一切ない。ギリンガムくんだけが真相をだいたい把握しただけで、関係者を一堂に会して真相を披露したりしてない。
被害者の正体は?それのみがキモ。現在では成立しえない古典的な探偵推理小説。わりとシャーロック・ホームズの長編っぽい。

巻末解説を読んで驚いた。金田一耕助のモデルはアントニー・ギリンガム?!この探偵には意地悪さやアクの強さはない。爽やか青年。

だが、ギリンガムはヘヴァリーくんに夜中に沼に潜らせたりしてるのに、重大な局面で邪魔者扱い。ヘヴァリーはギリンガムを罵る。この英国青年の会話とやりとりが楽しい。英国のユーモア。

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