偸盗(大正6年)疫病で死んだ女の死体を野犬が喰い、道路わきに子どもの死体が変色して積まれている平安ディストピア京都が舞台。
義理の娘沙金を遊女にする老婆、沙金を手籠めにした爺、沙金と三角関係の太郎次郎の兄弟。白痴の娘・阿漕。それぞれ主観で語られる。
最悪な炎天下死屍累々の地獄都市京都の風景。男を手玉にする沙金の奸計で盗賊一味一家は藤判官の家に馬を盗みに入り返り討ちに遭いボロボロ。多くの者が死ぬ。そんな中、阿漕は次郎の子を産む。そして殺人。
読んでてとにかく気が滅入る。いずれみんな死ぬということを突きつけられる。ほぼほぼ映画を見ているような中編。クロサワ映画みたい。日本の近未来かもしれない。
地獄変(大正7年)これは中学生ぐらいのときに読んだことがあった。なんとなくしか覚えていない状態で2回目の読了。芥川の代表作として有名な作品。
本朝第一の絵師良秀は見たものしか書けない。地獄絵を書くために枇榔毛の牛車が燃えるところを見たいと堀川の殿様に願いでる。この殿様が異常。良秀の大切にしている娘を牛車に乗せて一緒に燃やす。これ、こどもが読むにはかなり難しい。芸術と残虐。
竜(大正8年)3月3日のこの池から竜が登りま~すと嘘の立て札を書いたら大騒動。多くの見物人が来てしまった…という、これも芥川しか書けないような描写に感心。
往生絵巻(大正10年)なんだか頭のおかしい坊主が来た!と騒ぐ町人を描いた戯曲のような短編。なんか面白い。こどもたちで「呼びかけ」のような文化祭出し物にできそう。
藪の中(大正11年)これは高校生のときに読んで衝撃を受けた短編。クロサワ映画の羅生門。3人それぞれの証言が食い違い真相はやぶの中。事件と言うのは当事者それぞれによって見方と感じ方が違うという傑作短編。THIS IS 芥川。
六の宮の姫君(大正11年)悲恋、貧乏、無常。人間ってひたすら切ない。
芥川龍之介を中高生に読ませてはいけないと思う。もう死のうかな?と思ってる人に、世の中にはさらに最低があると知らせる目的でなら読ませる価値もあるかもしれない。
日本語短編小説の名人として文体は大いに手本となる美しさだが。
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