2020年3月2日月曜日

アナザーストーリーズ「モスクワ五輪ボイコット」

昨年5月14日にBSプレミアムで放送されたアナザーストーリーズは日本のモスクワ・オリンピック ボイコットを扱った。何度かの再放送の末、ようやくタイミングがあって観ることができた。
今まで何度もオリンピックの名勝負や名場面をテレビなどで見て来たけど、1980年のモスクワ五輪だけはぜんぜん映像を見たこともないし、誰が金メダルを取ったのかも知らない。日本が参加しなかったオリンピックに国民は何も関心がない。
モスクワ・オリンピックはアニメ「ルパン三世 PART2」にも出てくるのに何も情報がない。

自分はずっと疑問に思っていた。どういう経緯で不参加の意思決定がなされたのか?JOCが密室で決めたんだということしか知らなかった。
4年に一度しかないオリンピックに政治的な理由から参加しない。それはオリンピック種目競技に青春のすべてを捧げてきた代表選手たちからすると絶望。何のために今までがんばってきたのか?やりきれないしむなしい。
この当時の日本は柔道の山下、マラソンの瀬古、レスリングの高田といった選手たちが金メダル候補でキャリア史上最高の状態に仕上がってた。
オリンピックにはその歴史上何度も汚点があるのだが、最大の汚点が平和の祭典をこれから開催する国家がアフガニスタンに軍事侵攻したこと。
当時のアメリカ大統領ジミー・カーターはアメリカ選手団をオリンピックに派遣しない決定をした。
アメリカの同盟国で外交と安全保障でアメリカの言いなり国家日本は当時大平内閣。アメリカの決定には当然に追従しないといけない。外相もただちに日本も参加すべきでないと表明。
だが、オリンピック参加決定権はJOCにあって政府が介入できることではない。
7月のオリンピック参加エントリー締め切り日の前日にJOC臨時総会が開かれる。そこになんと大平内閣の官房長官伊東正義が出席。
ここで各競技団体を代表するトップがつぎつぎと不参加やむなしと意見を変えた。
このときの会議室にいた日本体育協会職員・伊藤公(いとういさお)氏が秘密に議事録を記録していた。(録音?)
2005年に議事録を公開したことで、誰がどうやって不参加決定にしたのか?が明らかになった。

会議に政府関係者がいることに日本ラグビーを代表して学識者として参加していた大西鐵之祐氏がかみついた。なんで政府が干渉してんだよ?!
日本体育協会会長で日本アマチュアスポーツ界のドンで、大平首相と昵懇の参議院議員・河野謙三(河野一郎の兄)が一喝。
「政府が干渉した覚えがあるか君。何がおかしいだ。でたらめを言っちゃいかんよ。政府が何を干渉したんだよ。そういうことは言うなよ。干渉された覚えはないよ。私が出てくれって呼んだんだよ。」
こちらから呼んだのだから干渉ではないという謎論理。こういうのは今も政治の現場で通用してる。
JOC委員長柴田勝治氏「結論から申し上げると、第22回オリンピック競技大会に対するナショナルエントリーの申し込みはムリであるというのが私の結論だ」
このときの会議の様子も「いだてん」でやっていればもっと視聴率も良かったかもしれない。

カーター元大統領はオリンピックにボイコットという政治を最初に持ち込んだ人物として今もスポーツの国際大会関係者から冷たい扱いを受けているらしい。
国際政治と安全保障に責任のある大平や伊藤は致し方ないかもしれないが、政治に忖度した柴田JOC委員長、河野謙三日本体育協会会長は日本スポーツの歴史に汚点として永遠に名前が刻まれた。
選手たちに申し訳ない、残念だという気持ちがあるのなら、選手たちの目の前で腹を召されるべきだった。
ちなみにアメリカは同盟国と西側諸国にもボイコットを呼びかけた。サッチャー英国首相も「参加すべきでない」と表明。だが、英国はさすがに市民社会が成熟していた。参加費用を寄付金に頼って選手団を送り込んだ。
ちなみに、モスクワ五輪にはイギリスの他にフランス、イタリア、オランダ、ギリシャ、デンマーク、ベルギー、ポルトガルも参加。政治とアマチュアスポーツは別だという気概を見せた。
モスクワ大会で生まれたスターが男子1500m金メダルのセバスチャン・コー(英国 当時23歳)。800m、1500mで当時の世界記録保持者。この人もいろんな圧力を受けた。だが、参加した。結果、英国の英雄。今もスポーツの世界で活躍。今もハンサム英国ミドル紳士ぶりにびっくり。
調べてみたら英国は男子100mでもアラン・ウェルズが金メダル。男子100mは黒人選手の独壇場かと思ってたらモスクワはスコットランド出身選手がキューバ人と同タイムの末に優勝してた。

モスクワの4年後のロスアンゼルスは開会式や日本人選手の活躍が何度も名場面としてその手の番組で映像が流れる。モスクワに日本が参加していれば多くの感動の名場面が残された可能性があった。
モスクワボイコットへの報復としてロスアンゼルスではは多くの東側諸国がボイコットした。(ルーマニアやユーゴスラビアは参加した。長らく不参加だった中国が久しぶりに参加した。)

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