2020年3月10日火曜日

アガサ・クリスティー「教会で死んだ男」(1954)

クリスティマラソン63冊目、アガサ・クリスティー短篇集12「教会で死んだ男」を読む。宇野輝雄訳1982年ハヤカワ・ミステリ文庫版で読む。この訳者で読むクリスティは初めて。
SANCTUARY AND OTHER STORIES by Agatha Christie 1951,1961
 13本の短編を収録。1から11までは1923年と1928年に書かれた初期ポアロもの。ヘイスティングズくんも登場。13は1954年に書かれたミス・マープルもの。

1.「戦勝記念舞踏会事件」は登場人物たちが仮装している以上、誰かが入れ替わってアリバイ工作してるんだろうなぐらいのことは容易に想像がつく短編。

2.「潜水艦の設計図」は最近読んだ「死人の鏡」収録の短編「謎の盗難事件」とほぼ同じ内容。国防省から呼び出されたポアロが設計図盗難事件を速やかに解決。

3.「クラブのキング」瀟洒な郊外の邸宅に「人殺し!」と叫びながら逃げ込んできて気を失ったバレエダンサー、そして意外な真実。

4.「マーケット・べイジングの怪事件」も「死人の鏡」収録の「厩舎街の殺人」とほぼ同じ内容。被害者と真犯人の設定は変えられている。

5.「二重の手がかり」宝石盗難事件。ロサコフ伯爵夫人登場。「オリエント急行殺人事件」にも登場するロシア語アルファベット問題。

6.「呪われた相続人」バスカヴィル家の犬を想わせる中世の因縁。これは真相にそれほど驚けなかった。

7.「コーンウォールの毒殺事件」ポアロの元へ「毒殺されるかも」と相談に来た婦人が後日死亡した。ポアロは犯人を追い詰める。

8.「プリマス行き急行列車」はポアロ長編「青列車の秘密」とほぼ同じアイデアの短編。

9.「炊事婦の失踪」有名な探偵ポアロの元にはどうでもいい事件も持ち込まれる。だが、銀行員失踪事件と結びつく意外な展開。これは真相が恐ろしい。

10.「二重の罪」昔お世話になった恩人は助けたい。だが、鉄道で行くには不便なのでヘイスティングズから観光バスで行くことをすすめられるのだが、片道だけなのにツアー全額料金を求められ不満。バスで一緒になった古物商代理16歳少女が高額な細密画を盗まれる事件に巻き込まれる。

11.「スズメ蜂の巣」毒殺事件を未然に防ぐポアロ。これは十分意外性があるし味わい深い。一幕もの二人芝居なんかにもできそう。

12.「洋裁店の人形」人形がいつのまにか移動してるんですけど!?という怪談。

13.「教会で死んだ男」ミス・マープルものだが出番はほんの少し。主人公は牧師夫人。祭壇で胸を撃たれ瀕死の男が残した「サンクチュアリ」という言葉の意味は?これも宝石盗難事件と人情ドラマ。

個人的に好きだったのは「炊事婦の失踪」「二重の罪」「スズメ蜂の巣」の3本。

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