2020年3月5日木曜日

コナン・ドイル「シャーロック・ホームズの帰還」(1905)

コナン・ドイル「シャーロック・ホームズの帰還」(1905)を駒月雅子訳2016年角川文庫版で読む。「回想」を読むはずが間違って「帰還」を先に読んでしまった。
THE RETURN OF SHERLOCK HOLMES by Sir Arthur Conan Doyle 1905
「空き家の冒険」モリアーティ教授と格闘しライヘンバッハの滝壺へと転落したホームズがワトソンの前に帰還する話。空き家にホームズ人形を置いて狙撃犯をおびき寄せるという話。ドラえもんで言えば「帰ってきたドラえもん」に相当する1本。

「ノーウッドの建築業者」遺産を贈られた青年が被相続人の焼死体が発見されたことで窮地に陥りホームズの元へ。無能レストレイド警部はこいつが犯人と決めつけ、さらに容疑者に不利な指紋の証拠も見つかり大ピンチ。だが、屋敷のあることに気づいたホームズは罠をかける。
こいつは意外性があって面白かった。だが、19世紀末のスコットランドヤードは動物の焼死体を人間の焼死体と区別もつかないレベルなの?

「踊る人形」この短編は暗号学の本にも出てくるので知ってた。アルファベット頻出度から1文字ずつ推定していく換字式暗号の解読がテーマ。「僕は多様な形式の暗号文に精通し、160種の暗号を分析したささやかな論文も発表しています」というホームズが、謎の人文字暗号を少ないサンプルから推測し読み解く。暗号以外のストーリーもわりとしっかりしてて名作だと感じた。

「孤独な自転車乗り」破格の好待遇で家庭教師に迎え入れらた婦人へのつきまとい事件。え?昔の英国は婦人を拉致して無理矢理結婚式を挙げても有効なの?!

「プライアリ・スクール」名門貴族の嫡男が寄宿制学校から謎の失踪。一緒にドイツ人教師も失踪。ホームズが秘密裏にワトソンと捜査。これも読みごたえがあってワクワクしながら読めた。今までまったく知らなかったけど名作だと思う。

「ブラック・ピーター」元船長が自宅離れの寝室で殺害されていた事件。ホームズはお得意の新聞広告で犯人をおびき寄せる。

「恐喝王ミルヴァートン」上流階級のご婦人たちのスキャンダルを収集し恐喝するゲス男をホームズはとある婦人に代わって交渉するがらちが明かない。仕方がないので部屋に侵入し手紙を盗んでしまおう!だが、現場で人間ドラマを目撃。

「六つのナポレオン像」あまり価値のないナポレオンの石膏像が次々と叩き割られて行きついに殺人も!これは真相はなんとなく想像がついた。だが、ストーリーがしっかりしてるのはコナン・ドイルならでは。

「三人の学生」奨学金受給資格のかかったギリシャ語試験問題が盗み見られた?!という事件。犯人は三人の学生のうちの一人だろうと思われるが、管理人の様子がどこかおかしい…。これもなかなか佳作だと感じた。

「金縁の鼻眼鏡」田舎屋敷に住む老教授の秘書が刺殺された事件。ダイイングメッセージは「あの女」。そして犯人の遺留品の鼻眼鏡からホームズは犯人の容姿イメージを推定。これも思わぬところから真犯人が現れる。伏線回収もみごと。

「スリー・クォーターの失踪」ケンブリッジ大ラグビーチームの名選手失踪事件。秘密を握ってるらしい偏屈医者がホームズの尾行を巻く。そして人間ドラマ。

「アビイ屋敷」普通の強盗殺人事件かと思われたのだが、鋭すぎるホームズはいろいろと違和感に気づいて…。これも最後はヒューマンドラマ。

「第二のしみ」もし公表されれば戦争になりかねない外交機密文書の紛失事件。前途有望の若手政治家の将来に傷がつく重大案件。ホームズはとある殺人事件との関連を調べると、政治家の妻が浮上。ホームズがすべてまるく収めて一件落着。

この短編集のクオリティの高さに驚いた。どれもが話として意外性があって面白いし読みごたえがある。
短編推理小説はコナン・ドイルの段階ですでに完成形だったことにも驚いた。ホームズとワトソンのキャラが100年以上愛されている理由がわかったきがする。とても魅力的な短編集だった。

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