2019年12月24日火曜日

十戒(1956)

セシル・B・デミル監督が旧約聖書「出エジプト記」を描いた1956年パラマウント映画「十戒」をついに見通した。なんと総天然色3時間50分という超大作。
デミル監督は1923年にも「十戒」を撮ってるので、この1956年版はセルフリメイク。

自分、長年クラシック音楽を聴いてきたのだが、ざっくり言って、声楽曲のほとんどが(一部の例外をのぞいて)旧約聖書の世界であると言っていい。
欧米人にとっては常識だが、旧約聖書の世界を(新約もだが)日本人はほとんど知らない。今回、理解を深めるために、最初で最後のつもりで見通した。すごかった。

エジプトで奴隷として使役させられているユダヤの民を率いるモーゼ役がチャールトン・ヘストン
この人は身長190cmの筋骨たくましい大男。英雄を演じるにはこれぐらいでないと。
マイケル・ムーア監督の映画でこの名前を知ってる人がいるかもしれない。全米ライフル協会の会長だった人。強いアメリカを体現する人物。
この人の代表作は「ベン・ハー」かこれ。どちらも現在では不可能なぐらいの莫大な費用をかけた超大作。アメリカの映画は巨大産業。

冒頭でいきなり予言でユダヤの幼児が殺される場面。あれ?自分、イエス・キリストが生誕するときのヘロデ王の話と混同。エジプト兵に殺されそうになる前にカゴに入れて川に流す。そしてファラオの王妃が拾って我が子と偽って育てる。
ライバルとなるファラオの王子(兄)がユル・ブリンナーだが、この人がほぼオードリー春日w 声質、表情、動きの間合い、雰囲気、ほぼすべて春日。
モーゼのことが好きだったのに後にファラオの王妃となる女がすっごく現代娘っぽい。

序盤はしつこくファラオによるユダヤ人奴隷労働の酷さが強調される。奴隷たちが巨大神殿を建設する場面は壮大。オベリスクが立ち上がるシーンとか、巨像が曳かれる場面とか、巨大セットとか。

この映画、動物たちが入り混じったモブシーンが圧倒的。今はなかなかこんな撮影はできない。
海がぱっくり割れる場面や、黄金の牛と十戒の場面よりも、なにより出エジプトのクライマックスシーンが壮観!本当にこんなことがあったのかもしれないな…と想像を膨らませることができる。
古代では民族と民族の戦争はつまるところ信仰する神と神の戦い。この映画ではユダヤの神が連戦連勝。ファラオ側が次々と不幸になって連戦連敗。

旧約聖書に書いてある物語でなければ、ちょっと都合よすぎる展開。誰だって自分の国と民族が連戦連勝で対手を圧倒するのを見るのは気持ちよいに違いない。
スター俳優たちの芝居が今日とちょっと違うように感じた。舞台の芝居っぽい。

捕虜でありながら上手いこと取り入る幇間のようなガヤ醜男を見て、日本人のシベリア抑留でも同じような人がいたことを思い出した。

自分には出エジプトの物語の理解が進んだ。その点、見て良かったと思う。なにせ長大だが絵が圧倒的なので一気に見通せた。なんとなく知ってる話は記憶と一致させながら見るので飽きない。

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