2019年11月14日木曜日

横溝正史「人面瘡」(昭和35年)

まだ読んだことのなかった横溝正史「人面瘡」(平成8年角川文庫 金田一耕助ファイル6)がそこに100円で売られていたので買い求めた。5本の短編を収録した一冊。

だが、後悔した。この新版の金田一耕助ファイルシリーズには解説文もなければ初出データすらない。その小説がいつ書かれたのか?それがわからないと読者は理解する上で様々な困難を味わう。
なので、偉大な先人たちのネットで調べて初出は特定した。

では、読みたいものから読んでいく。

「人面瘡」
昭和24年に講談倶楽部で発表された短編を昭和35年「支那扇の女」単行本化のときに金田一モノに改変したものらしい。もうタイトルからして気持ち悪いw

またも金田一さんは磯川警部と岡山県の山奥の温泉宿で休暇中。
温泉宿の寝たきりご隠居(夫人)は、その女中(神戸から疎開してきた?)が働き者で気立てが良いので、シベリア帰りの若旦那と結ばれたらいいなと思ってた。
だが、その女中は夢遊病?わきの下に人面瘡が?!前の婚約者は空襲で死亡?

さらに女中の妹がやって来て若旦那を誘惑?その女を追いかけて顔にあざのある男もやってきていた。
だが、そこで女中の自殺未遂、そしてその妹が水死体となって渓流の淵に浮かんでる。

これ、金田一さんは何もしてないw 関係者が自分から真実を語って、それだけで終わる。
人面瘡に関する医学的知見も疑わしい。金田一短編ってなかなか面白いものがないなという印象をさらに強くしたw

「蝙蝠と蛞蝓」(昭和22年)
隣の部屋に越してきた金田一という男が蝙蝠みたいで気持ち悪い。湯浅は裏に住む蛞蝓みたいな女を殺して金田一に罪をかぶせるというプロットの小説を書いてみて放置してたら、本当に殺人が起こってしまった!
血の付いたナイフ、血の付いた着物、金魚鉢に自分の指紋などの証拠もそろってて絶体絶命!だが、そんな自分の窮地を救ってくれたのは金田一耕助だった!

これ、予想外な展開で短編としてはわりと面白くて人気作。

「睡れる花嫁」(昭和29年)
自宅に結核で亡くなった妻の死体を放置していたのを発見された男、やってあきた警官を刺殺、さらに病院から盗み出した美女の死体を凌辱…という猟奇な事件。

あー、はいはい。乱歩みたいな連続殺人鬼ものね…と思ってたら、さらに醜くどすグロい事件だった。

「蜃気楼島の情熱」(昭和29年)
瀬戸内の小島に御殿を建てたアメリカ帰りの男、対岸で医者の息子の葬式から船で島に戻ると、新婚妻が絞殺されていた事件。
金田一さんがちょっとの聴き込みと物的証拠の発見から「こうでしょう」と真相を話す。

金田一シリーズの中でも瀬戸内舞台作なので、舞台装置と雰囲気はとても横溝っぽい。半裸の夫人の死体の傍に義眼が置かれたいたとか。
佳作だが、伏線回収が不足しているように感じた。動機がドライでクリスティっぽいと感じた。

24になる新妻が「処女か?否か?」について、いい年した大人たちが公然話題にするとか、昔の日本の田舎の人々はおかしい。
なお、この作品は冒頭で、久保銀造が金田一さんに「なんでいつも和服なん?」って訊いて、金田一さんが「日本での生活で洋服は非効率」「腹の出た人がフーフーいって靴紐を結んでいる姿は気の毒」と答える場面が貴重。

「湖泥」(昭和28年)
数年前に読んだことがある。読み返した。これは隠れた名作として人気が高いらしい。
最初に怪しい人間が一周廻ってやっぱり怪しいという、クリスティやエラリーでもあるパターン。証拠がないので金田一さんはハッタリかませて犯人を追い詰める。

この5作で一番好きだったのは「蝙蝠と蛞蝓」。「湖泥」「蜃気楼島の情熱」「人面瘡」も横溝正史を語るなら、ぜったいに読んでないといけない中編。

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