2019年11月3日日曜日

田中英光「オリンポスの果実」(昭和15年)

田中英光「オリンポスの果実」(昭和15年)を読む。
中学生の時からこの本の存在は知っていたのだが、「いだてん」がロスアンゼルス五輪に差し掛かったというタイミングでようやく読む。

田中英光(1913-1949)は誰でも知ってる作家というわけでもないが、この作品だけは新潮文庫で版を重ね読み継がれている。
長編にしては短い爽やか青春小説。高校生でもすぐ読める。

自分、最近までこの作家が早大生時代にロス五輪(ボート)に出場し、後に太宰治の弟子となったということを知らなかった。

ざっくり説明するとボート選手としての1932ロス五輪体験記。
主人公は早大ボート部の選手。こいつがひょろっと背が高く童顔でおっちょこちょいのぼんやり野郎。
これから横浜港からサンフランシスコへ向かうという段階で支給されたブレザーを紛失。どこへやった?!とパニックになりタクシーで何度も家と練習場所を往復。こいつはロスのゴルフ場でもガマグチをなくすし選手バッジもなくす。

だが、往路の船上で熊本秋子さんという20歳ぐらいのハイジャンプ選手と良い感じの仲になる。

周囲の選手たちがガヤで最悪w まるで罪人扱い。団長から男女で口を利くのもいかん!と厳禁。
洋上のシーンの描写が一番多い。ボート選手として参加したオリンピック自体の描写は予想外に少ない。他の競技の応援には行かないのかよ。
この本はオリンピックから10年後のもうすぐ30歳という時期に、この秋子さんへ書く手紙という形式。秋子さんも結婚しているらしい。

ロスでは意外にも選手たちは自由に観光へと出かけている。カメラも持っている。みんな裕福な大学生たち?
主人公はなじみのカフェ女給がいるわりに爽やか青春野郎。だが、後の左翼文学青年なのでいろいろ屈折してる。なぜか秋子に急に冷たい。無視し始める。

帰りの船でも
男は女が自分に愛されようと身も心も投げだしてくると、隙だらけになった女のあらが丸見えになり堪らなく女が鼻につくそうです。女が反対に自分から逃げようとすればするほど、女が慕わしくなるとかきいています。そこに手練手管とかいうものが出来るのでしょう。
なんか、予想してた展開と違う。脚にうぶ毛があるのを見ただけで「厭らしい」とか何なの?

まあ、予想通り進まないところがリアルな青春日記っぽい。10年後に「で、好きだったの?」って聴いてみてどうする?!

オリンピックに選手として参加した仲間たちは数年後には多くが不幸。自殺、心中事件、外地へ行った者、戦死したもの…。
田中英光も戦後、太宰の死にショックのあまり薬物中毒の果てに太宰の墓前で自殺…。享年36歳。

PS. 実は自分、もう4大会ぐらいオリンピックをほとんど見ていない。てか、スポーツ中継も見ないしスポーツと関わりもない。

巨大スポンサー米国の意向で開催時期を真夏にやらないといけない意味が分からない。もう国威発揚オリンピックの意義は終わった。
競技種目が多すぎる。以前のようにこじんまりアマチュア大会に戻して途上国でやるかギリシャ永年開催でいいと思う。

東京大会のありとあらゆるトラブルと騒動(費用、エンブレム、競技場、ボランティア、東京湾の大腸菌、暑さ対策、マラソン開催地変更)は、この国の劣化を想わずにはいられない。もちろんIOCも嫌い。この団体を自分はAmazonみたいなもんとしか見ていない。

開会式にPerfumeが出ないかぎり見ないw 大会期間中はテレビつけず読書してるか映画見てるかだろうと思う。

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