2019年10月19日土曜日

三島由紀夫「仮面の告白」(昭和24年)

三島由紀夫「仮面の告白」を読む。自分、中学生時代に「潮騒」「金閣寺」を読んだ。そのとき「仮面の告白」も読むリストに入っていたのだが、新潮文庫版の裏に書いてある簡単なあらすじ「女性に対して不能であることを発見した青年が、」の件が、金閣寺以上におどろおどろしいような感じがして結局読まなかった。これを中学生当時に読んでも気持ち悪くて意味が解らなかっただろうと思う。

で、今になって読む。現行の新潮文庫版の表紙がダメ。この表紙の新潮文庫しか認めない。三島由紀夫の格調高く美しい文体を予想させる良い装丁。

これ、少年時代の前半が読んでてキツい。ずっとホモセクシャルな性癖性向の告白。

だが、草野センパイという人と交友するようになりその妹園子が現れてからは普通の恋愛青春小説になる。
やがてふたりはキスをする。だが、この青年はかわいらしい園子に対して何の感情も起らない。

やがて草野センパイから妹と家族の代理で「で、どうなの?結婚とかしないの?」という手紙が届く。だが丁寧に婉曲に断る。想像以上にいろいろ展開が速い。

そして戦争が終わり、官吏登用試験に受かった主人公の前にふたたび園子が現れる。園子は見合いの末、外交官と結婚し幸せになっていた。無難に最近の作家の話題なんぞをする。かつてのように、Aという作品は読む?と聞いてみた
園子「あの女の裸の?」
主人公「え」
園子「いやだわ……表紙の絵のことよ」
二年前、彼女は面と向かって「裸の女」などという言葉を使える人ではなかった。園子がもう純潔ではないことが、こうした些細な言葉の端から痛いほどわかるのである。
長年自分も関心のある人の言葉の端々に注目してしまったので、すごくよくわかるw 
だが、使う言葉一つで「純潔でないことがわかる」なんてありえない。どんだけ痛いんだよ。

園子と再会してからの煮え切らない展開が読んでいて地獄w ラスト5分間の緊迫感と手探り感。そして終局の幕の下りる速さ。

三島の文体がまあ美しくて真似できない上手さ。大蔵省を辞めて作家に転じた24歳の文学の才能がすごい。高校生が読むにはイッパイイッパイになるぐらいいろいろ難しい。

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