2019年10月16日水曜日

吉岡秀隆「八つ墓村」(2019)

10月13日の夜9時、台風19号関東直撃という、ただじっとしてるだけで恐ろしい状況下。多摩川&荒川そして東京中のほとんどすべての河川が氾濫目前という役満リーチ状態で「八つ墓村」がBSプレミアムで放送された。

前回の「悪魔が来りて笛を吹く」で仄めかされていた待望の新作だが、登戸の無差別児童殺傷、単独犯日本新記録となった京アニ放火事件といった拡大自殺を連想させるのでお蔵入り企画になるかもと思ってた。予定通りの放送だった。

角川文庫の原作を初めて読んだのがたぶん中3か高1のころ。当時はそれほど面白いと思えなかった。
そして、満を持しての市川崑監督による豊川悦司版(1996)を見て、野村芳太郎監督による渥美清版(1977)を見た。どちらもさっぱり面白くなかったw (ひょっとすると稲垣吾郎版も見たかもしれないが、まったく覚えていない)

金田一耕助は前回に続いてまたしても白髪交じり短髪の吉岡秀隆だった。見た目がまるで初老w
金田一さんはもっさり汚らしい長髪モジャモジャヘアスタイルでないとしっくりこない。
実質主人公の辰弥を演じたのは村上虹郎という若手俳優だが、この人はなんと村上淳の息子だ。びっくり。だが、あんまり昭和20年代の人物という感じがしない。(村上淳は「悪魔が来りて笛を吹く」では新宮利彦という諸悪の根源を演じていた)

懐中電灯二本刺しハチマキの狂人多治見要蔵がポン刀と猟銃を提げてこちらに向かって走ってくる姿だけが「八つ墓村」のホラー映画としての魅力。
今回の要蔵はなんと音尾琢真という意外なキャストだったのだが、こんなやつにロックオンされるかと思うと心底恐ろしいものを感じた。このキャストは良い。
美也子役は真木よう子。昭和20年代の女らしかったし役柄にぴったりな雰囲気だった。さすがの存在感とハマり具合。発声が芝居がかって異常に感じた。いかにも横溝正史の悪女といった感じ。辰弥の背中の火傷の跡を舌でぺろぺろ舐めるシーンはエロすぎてたまげた。

自分としてはその他どのキャストもしっくりこない。やたら軍人らしさを出す駐在の警察官も現代の若者にしか見えなかった。
昭和20年代の雰囲気を今出そうとすると大変に難しい。例外的に典子役の佐藤玲という女優は容姿雰囲気声質喋り方が昭和20年代で感心した。

自分は「八つ墓村」が苦手。雰囲気だけの作品で、どうやったって「八つ墓村」は面白くなりようがないと思ってる。
今回の喜安浩平脚本、吉田照幸演出には多少の期待はしていたのだが、これもやっぱり自分の予想をそれほど上回らなかった。もう見返さないと思う。

もし自分がこの作品の映像化を命じられたら、落ち武者だまし討ちシーン、要蔵の村人32人惨殺シーンは一切カットしたいw
登場人物にさらっと説明させるだけにしたい。ハイコントラストのコマ送りモノクロ映像フラッシュバックだけにしたいw

77年野村版みたいな洞窟の中でのエロシーンと妖怪変化シーンがなくてほっとした。渥美清のバナナのたたき売りみたいな口上でのくどい説明がなくてよかった。
だが、最後の病室での真木よう子告白シーンはやっぱり嫌い。徹底的にドライに、金田一さんの口からさらっと真相を説明するだけがいい。國村隼、小柳友とのシーンもいらない。
堤幸彦監督が「TRICK」でも散々にバカにしていたアホすぎる無教育村人たちが、過去作と比べて一番飛ばしてんなあと思ったw 殺人の共同謀議だし住居不法侵入だし武器準備集合罪だし傷害と殺人未遂。あの執念深すぎるイッちゃったリーダー格の男は実刑くらうに違いない。他の村人は脅されてしかたなく…ってことにすればいい。

あと、最初に尼僧が毒殺される場面も、真木よう子の最期も、なんで医者がすぐ手当しない?って思った。
それにしても主人公辰弥はスーパーハードな体験をした。だが、今回のラストは希望の持てる楽しいものだった。このシーンは好き。大判がリアルじゃなかったけど。
それだけにその後のラストの怖すぎシュールさが映えた。

BGMがベルリオーズの幻想交響曲だったのは新鮮だったけど合ってたのか疑問。それに手あかのついたデスペラードはダメw

事件が終わって磯川警部(小市慢太郎)は「亀の湯っていういい温泉があるんですよ~」と金田一さんを誘う箇所に笑った。
ということはつまり、次回作は「悪魔の手毬唄」だ。たまには違う作品も見たいのだが。

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