2019年10月17日木曜日

有栖川有栖「孤島パズル」(1989)

有栖川有栖「孤島パズル」(1989)という本を読んだ。1996年創元推理文庫版で。
THE ISLAND PUZZLE by Alice Arisugawa 1989
今年の2月に買って積んでおいたもの。自分、推理小説をよく読むようになってまだ4、5年。この作家の名前もBO本棚でよく目にしていたのだが、ペンネームがちょっとふざけた感じがして勝手にライトなイメージを持ってて眼中になかった。
これはタイトルとジャケットと、孤島を舞台にしたクローズドサークル連続殺人っぽいので「ひょっとしたら面白いかも」と買っておいた。

主人公の名前が有栖川有栖。文中ではずっとアリスと呼ばれていて、こいつが男子大学生だということになかなか慣れなかった。
そしてヒロインは有馬麻里亜。この美少女も名前がふざけててラノベ感がする。ふたりとも京都の大学に通う法学部2年生。アリスとマリアでも日本人。

あー、はいはい。20歳の大学生が夏休みバカンスで絶海の孤島へ行って外部と連絡が取れなくなって連続殺人が起こるパターンね。キャンパスでの会話もコミカル。ジュヴナイル感もする。
ミステリー研部長の江神二郎が名探偵役らしい。黒髪ロン毛7回生。京都コトバの探偵。

奄美の南にある熱帯の島・嘉敷島は、上向きランドルト環のような形をしていて、内側が湾になっていて、先端に親戚一同が宿泊する望桜荘があり、もう片方に画家がアトリエにしているロッジがある。ここはボートで行き来する。陸路だとぐるっと島を回って徒歩だと1時間半自転車だと30分かかる。

バカンスしながら資産家アリスの祖父が孤島に5億円相当の宝石を埋めたという宝さがし。島内に点在するモアイの向きが暗号になってる?
これが社会派刑事ドラマとかクソくらえな現実離れした設定でとてもワクワクする。
海岸の岩場での宝探しはちょっと新田次郎「つぶやき岩の秘密」を連想した。

マリアの伯父一家の長男は財宝探しあと一歩のところで溺死という事故死をしていた?
そしてその恋人だった女性はその家の養女になっている。
次男はライフルを不法所持。滞在客に見せたり撃たせたりする。夜は酒飲んだりジグソーパズルをして1日を過ごす。

やがて、親戚親娘が室内で射殺される。しかもドアも窓も内側から鍵。台風接近で銃声が聞こえなかった?父は大腿部を撃たれ後頭部をテーブルの角に打ち付けて倒れていた。胸を撃たれた娘はその上にのしかかるように重なって倒れて絶命している。自殺なの?他殺なの?先に死んだと思われる娘の方が上に重なってるのはなぜ?
凶器のライフル銃が室内にない。窓の外はすぐ海。海に捨てた?外部と連絡を取るための唯一の手段である無線機が壊されている!

そして今度は対岸に住む画家が胸をライフルで撃たれて死んでいる。散乱するジグソーパズルにダイイングメッセージでもあったのか?
ボートがその夜マリアのおっちょこちょいで転覆し湾内を漂っていて使えなかった。つまり犯行は自転車での往復で行われた?

やがてこの家の次男が自殺。兄殺し、密室殺人、画家殺しを告白する手紙を残して。だが、江神はささいな証拠から他殺であることを見抜く。

この江神二郎という大学生がエラリーくんばりのガチロジックで犯人を特定。犯行時刻と自転車の存在と不在のアリバイ、路に落ちていたメモ紙の上に自転車のタイヤ痕があったという事実から、こいつしか犯行を行えなかったと見抜く。
娘が父に折り重なって死んでいた理由を知ったとき「どっひゃあ」と声が出たw

江神くんはエラリーくんのように自信満々じゃない。証拠がないことを認めてわからないところは犯人に教えを乞う。

この本、自分はめちゃめちゃ面白かった!読んでる最中も飽きないし、細部までパズルのピースがピタッとあって爽快!犯行動機も日本人に合ってる。
これがクリスティやエラリーだったら大絶賛の名作になっていたに違いない。エラリーよりはるかに面白いかもしれないw 

なんで今までまったく知らなかったのか?今後も有栖川有栖を探して読んでいく。また読書の幅が広がった。自分が知らなかっただけで平成時代は才能あるミステリーの書き手であふれていた。

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