2019年10月12日土曜日

渡部淳一「阿寒に果つ」(1973)

渡部淳一「阿寒に果つ」を中公文庫(2015改版)で読む。婦人公論1971年7月から72年12月号に連載されたものが初出。1973年に初単行本化。

渡部淳一(1933-2014)の本を読むのは初めて。まさか自分が渡辺淳一を読む日がくるとは思ってもいなかった。自分、元医者の書く恋愛小説なんか読めるか!と思ってたw

だが、これを読もうと思ったきっかけは乃木坂46橋本奈々未「恋する文学」で取り上げられたから。たぶん橋本はこの本をちゃんと読んでる。

そして、記憶に新しい2017年に起った中国人女性の失踪事件。この本をモデルにした自殺らしい。ということは、中国でも有名な一冊らしい。
物語は1952年4月13日、雪解けが始まった阿寒湖を見下ろす釧北峠の一角で、赤いコートを着た女子高生の遺体が雪原から発見される場面から始まる。

そして高校2年生の回想。
1952年は学制が変わり、通ってた学校の名前が札幌南高校に変り、男子校だったのに2年生に進級したら男女共学になって戸惑う…という時期。

ムッツリ生真面目高2少年俊一が、大人びた魔性の美少女純子に興味を持たれ、翻弄される。こっそり図書室でウィスキーを飲みタバコを吸いキスをする。昔はそのへん、おおらかでいいw
この少女が絵画の才能があって有名人。美術界の大人たちと交際し、新聞社の取材を受け、東京へも出かけたりする。
純子はじつは結核で学校をちょくちょく休んでいた。文化祭の雪像作りで喀血し周囲は大慌て。

修学旅行の上野では旅館で「下着!?」という青春お色気シーンも。いろいろと映像が眼に浮かぶ。
純子は俊一とラブレターを交わし、会うたびにねっとり濃厚なキスをしておいて、他にも数名の大人の男たちとも男女の関係?! 

純子の死から20年、俊一は純子の絵の師匠である画家に会って話を聴く。ここからは画家目線になる。これが聴くんじゃなかったという話。
14歳の中学生がとつぜん絵を習いたいと妻子ある30代画家浦部のアトリエにやってくる。最初は断るのだが絵の批評なんかして指導してると入選してしまう。天才少女として有名人になってしまう。

やがて少女の妖しい魅力に陥落。あとは肉体関係とドロドロ不倫。俊一くんと出会う前と交際中にもかかわらず。学校に来てない日は道東スケッチ旅行という名の不倫旅行。最悪。
夜の図書室で純子と一緒のところを見られたらどうしようと、夜回り先生にドキドキしてたピュアな関係は何だったんだ?!

そして今度は純子の姉の恋人だったハンサム新聞記者村木に話を聴きに行く。こいつも純子に誘われるままに肉体関係を繰り返してた。性が乱れすぎ。
そして純子が睡眠薬を大量摂取(自殺未遂)して病院に担ぎ込まれたときの医師千田に話を聴く。この人は紳士だったのでキス止まりだったw
この医師の証言から多くの新事実を得るのだが、「結核?そんなこと絶対ないけど」にはひっくり返ったw 純子、虚言癖オオカミ少女?!

さらに、純子が最後に会った男である党オルグで偽医者で現カメラマンの殿村にも話を聴く。もちろんこの男とも肉体関係。
純子が殿村の弟の文芸同人誌に書いた短編小説のタイトルが「二重セックス」w どんなJKなんだよ。

最後に純子の姉である蘭子に話を聴く。この姉とは同性愛的なことまで?!行為の描写が一番淫靡。

6人の目から見た純子についての証言のすべてが終わった。読んでいて時系列が混乱。
そして、俊一くんの結論。これが…、それほど意外性もない。ま、ミステリーじゃなくて純文学だから。
これが初期渡辺淳一の代表作らしい。18歳の少女をめぐる男5人と女1人。テーマとしてもっと若者に読まれてもいいと感じた。表現も平易でサクサク読める。
渡辺淳一が村上春樹ほど若者にバズってないのはなぜだ? 人格イメージだろうな。

この純子という18歳で自ら命を絶った天才画家は、渡辺淳一が実際に交際していた加清純子さんがモデルだそうだ。

この小説は映画化もされていると知った。五十嵐淳子と三浦友和?うーん、イメージと違う。
それに、橋本奈々未もまったくイメージと違うw てか、こんなとんでもないJKにイメージが会う女優が誰も思い浮かばない。

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