2019年9月24日火曜日

江戸川乱歩「化人幻戯」(昭和30年)

江戸川乱歩「化人幻戯」を読む。平成6年角川ホラー文庫版で読む。

25歳の庄司は推理小説が好きという縁で元侯爵の大河原氏の秘書として働く。
この家の父と娘ほどに年の離れた27歳妻が妖艶。やっぱりレンズ愛好家でいつも双眼鏡で何かを見て楽しんでる。乱歩作品にはそんな人が多い。

熱海の別荘で一家団欒中たまたま双眼鏡で崖から転落する人を目撃。被害者が大河原家に出入りする会社の社員姫田。
姫田は差出人不明の白い羽根が送り付けられていることを庄司に相談していた。ホームズの「5つのオレンジの種」のような脅迫では?そして日記には謎の暗号。

この作品は明智小五郎の登場する長編。箕浦警部補らに捜査方針をアドバイスする。
やがて姫田とライバル関係にあった村越(容疑者のひとり)が密室で撃たれ死亡しているのが発見される。その友人の画家も隅田川で水死体となって発見される。

事件のカギはやはり大河原由美子夫人か?実は殺害されたふたりと関係を持っていた?
やがて由美子は庄司をも手玉にとって関係を持つ。官能と情交。
庄司は夫人の日記の鍵を破壊し読む。そこに夫人の推理が書かれていた。庄司は明智に見せる。

以下ネタバレ

これ、乱歩の本格ってことになってるけど、殺害時刻のアリバイはわりと古典的。あえて遠くから殺害場面を見せるアリバイ工作と、テープレコーダーを使ったアリバイ工作の組み合わせ。今なら高校生でも見破る。

乱歩はプロットを決めずにだらだら書き始めることが多いそうだが、この作品も連載小説らしく締め切りに追われる乱歩先生が見え隠れする。冗長。
だが、それでもこの作品はそれほど酷くもない。

真犯人はカンのよい読者なら早々に予想がつく。夫人のもっともらしい日記を読んでる途中でつっこむ。

ただ、明智もビビったように犯人の動機がわからない。というか存在しない。夫人がカマキリを恐れる理由は何か? EQ「九尾の猫」みたいな動機かもしれない。

これは「陰獣」と対になる作品かもしれない。犯人の造形が良い。トリックよりも全体として雰囲気が良い。
由美子夫人は27歳だが、この人を演じられる27歳女優は今の日本にはいないと思う。今のまさみならできると思う。

「堀越捜査一課長殿」「防空壕」はすでに読んだことがあるので今回はスルー。

「断崖」は断崖上で男女が犯罪を回想する一場面。
「凶器」よく見る三面記事的な殺人事件。凶器はどこに?明智のアドバイスで事件解決。
「灰神楽」犯人目線の犯罪一部始終。火鉢の件で重大なミスを犯す。「心理試験」とちょっと似てる。

0 件のコメント:

コメントを投稿