2019年9月20日金曜日

アガサ・クリスティー「終わりなき夜に生れつく」(1967)

アガサ・クリスティー「終わりなき夜に生れつく」を読む。乾信一郎訳1977年ハヤカワミステリ文庫版で読む。私的クリスティマラソン52冊目。
ENDLESS NIGHT by Agatha Christie 1967
職を転々とするマイケル君はキングストンビショップ村をぶらぶら散歩している。「ジプシーが丘」と呼ばれる土地が売られているのを冷やかす。
ジプシーの血を引く老婆に強引に占いをされるのだが「すぐにここから出ていけ!」理不尽w なんか八つ墓村みたいだな。ジプシーが丘は呪われた土地だという。

だがそこでマイケル君は若く美しい女性と出会う。(ふたりともなんでそんな村にたまたまいるん?)
その美女エリーはアメリカの石油王の娘で大富豪w なぜかとんとん拍子で結婚。
マイケルは欧州で運転手などやってたとき知り合った有名建築家にジプシーが丘に家を建ててもらうことに。

エリーは21歳。伯父たちはすでにすべて死亡していて莫大な資産をすべて相続している。血縁関係のない親戚たちが次々やってくる。ちょっとお金を渡しただけではどこかへ行ってくれない。
エリーが完全に信頼し周囲のすべてを取り仕切るグレタという美人秘書もやってくる。マイケルくんとは気が合わない。
家の周辺ではビミョーに気味の悪い嫌がらせも発生。

これ、今まで読んだすべてのクリスティと毛色が違う。自分、なぜこれまでクリスティを読んでいるかと言うと、クリスティの英国が現代日本から適度に遠くて現実逃避に向いているからなのだが、「終わりなき夜」は会話がふわふわしててさらにリアリティーが感じられない。

まるで村上春樹を読んでいるかのよう。読んでも読んでも面白くなってくれない。これはミステリーではなくサスペンス小説?いや、サスペンスですらない。

全編に漂う重苦しさとゴシックロマン。ずっと主人公の一人称独白形式なので乱歩っぽい。ラスト5ぶんの1の急展開。
実はいろんなことが数名にバレていたときの冷や汗感といったらない。弁護士から新聞の切り抜きが送られてくる件は松本清張っぽい。

これはハズレかも…という思いはラストで裏切られる。
クリスティ女史の某有名作をすでに読んでいる人は「またこのパターンか!」と思うかもしれないが、これは今の作家もよく使う。十分に驚けるし佳作。クリスティ女史にとっても自信作らしい。

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