2019年9月22日日曜日

太宰治「新ハムレット」(昭和16年)

太宰治「新ハムレット」新潮文庫(平成7年)を読む。昭和15年~17年の間に書かれた5作品から成る一冊。読みたい作品から読んでいく。

まず、昭和15年の乞食学生を読む。ざっくり説明すると太宰VS.学生。

この作品には三鷹駅から井の頭公園へつづく玉川上水の土手の風景が出てくる。現在は歩道が整備され草の生えた土手など存在しない。
桜の木々と土手の風景を書き残した箇所が貴重なので、玉川上水には「乞食学生」からその部分を記した教育委員会の立て札がそこにある。自分は数年前に太宰と山崎が入水した地点を見て来た。

散髪代50銭持って家を出た太宰。玉川上水の土手を歩いていると、裸で泳いでいる子どもを発見。こいつが生意気な学生。話を聴くと数学を学ぶも学費が払えず退校。

井の頭公園の茶屋で親子丼を食べさせたり、帝都電鉄(京王井の頭線)で一緒に渋谷に出て学生の友だちに会ったりという話。
ひねくれた太宰が学生に自由勝手な話を聴かせる話。まさかの夢オチ?!ポップで面白い人気作。

新ハムレット(昭和16年)は太宰が前書きで断っているように、これを読んでシェイクスピアのハムレットを分かった気になってはいけない。登場人物の名前を借りて太宰が自由に戯曲っぽいものを書いた作品。

なにせ内容が太宰の時代の学生たちのするような会話。親子の会話。兄妹の会話。
父が大学生の息子にするアドバイスが読んでいて痛い。自分の失敗そのものw 
いきなり兄妹の会話に坪内逍遥先生の名前が出てきて笑った。太宰、自由すぎ。

ハムレットという劇を一度も見たことがなくてストーリーを知らない。オフィリアの妊娠と寵臣の反逆。朗読劇で王と王妃の真意を確かめる?ののしり合いばっか。読んでいてやっぱり困惑。

「女の決闘」は森鴎外全集第16巻収録の翻訳小説の評論
「古典風」は手癖の悪い女中の話がなぜか途中からローマ皇帝ネロの話に
「待つ」はわずか4Pで駅のベンチにぼんやり座る女の心の声

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