2019年6月7日金曜日

江戸川乱歩「黄金仮面」(昭和6年)

江戸川乱歩「黄金仮面」を読む。昭和5年9月より「キング」において連載が始まり、翌年に初の江戸川乱歩全集(平凡社)に掲載されたもの。春陽堂の江戸川乱歩文庫(2015)で読む。

黄金の仮面をかぶった怪人が出没。上野で開催中の産業博覧会に出品中の大真珠「志摩の女王」を盗み出す。昭和5年という時代を強く感じる。

基本、黄金仮面と明智小五郎の大捕り物。展開の仕方が古典中の古典というか講談のようで意外性が感じられない。どうせこいつは変装してるんだろう。どうせそう見せかけてるんだろう。入れ替わってるんだろう。こいつの正体はアレだろう。読者はぜんぶお見通しw

しかも途中から黄金仮面の正体がフランスから来日した怪盗紳士アルセーヌ・ルパンってことになる。

明智小五郎VS.アルセーヌ・ルパン!!
こいつが勝手なキャラ変してる。卑怯な泥棒。ルパンに著作権は?当時はまだそんな概念はなかったのかもしれない。

大鳥不二子という女が日本からルパン一味に加わっている。しかもルパンの恋人ってことになってる。
おそらくモンキーパンチ先生の「ルパン三世」の元ネタは完全にこれか?!
変装のカツラと髭を取ると「あっ、オマエは!?」という展開ばかり。ルパン三世で見た展開ばかり。

法隆寺にあるはずの国宝・玉虫厨子までも盗み出す。そいつを阻止するのが明智探偵なのだが、まだキャラがあまり固まっていなかったのか?思い付き推理で先回りしたり事前に手を打ったりするのだが、かなりおっちょこちょい。スキだらけ。ラストの飛行機の件もまったく納得がいかない。

当時の新聞広告だと「日本一面白い探偵小説」とか書かれているけど、それはかなり言い過ぎ。読んでいてぜんぜん意外性もない。筆者が読み手を上回ることもない。正直、かなり困惑した。

3 件のコメント:

  1. ルブランの「ルパン」も初期の数編は勝手にシャーロック・ホームズを登場させたうえ、けっこう情けないライバルに描いてドイルから抗議されています。
    乱歩もそれを知っているから面白がって描いたのでしょう。

    乱歩の「蜘蛛男」あたりから始まる「大活劇」は、一般大衆誌に連載されましたから、当時の普通の読者のレベルに合わせてあります。専門誌に書いていた横溝とは違います。
    基本はファントマやルパンだし、漫画や映画、TVに際限なくパクられたのでちょっと読むと全部タネが見えてしまいます。
    この時期のもので今読んでも面白いのは、筋はワンパターンながら敵が有り得ないほどサイコパスで強すぎる「人間豹」ぐらいでしょうか。

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    1. なるほど。そんな時代背景が!それならパクられても文句言えないw
      「人間豹」は小学生時代に角川文庫で読んだ記憶がありますが、それを最後に乱歩を近年になるまで読んでませんでした。

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  2. 突然失礼します。当時の時世、現在との娯楽の充実性の差を考慮せずに「日本一面白い探偵小説」について完全否定するのはいかがかと思いました
    その頃はきっと日本一面白いと謳えるものであったんじゃないかと思います

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