2018年8月1日水曜日

犬神家の一族(1976)

市川崑監督による1976年の「犬神家の一族」を久しぶりに見返した。BSプレミアムでやってたから。

久しぶりすぎて内容を一部忘れていた。自分は総合的にベストと考えるのが第2作「悪魔の手毬唄」なわけだが、こちらの第1作も日本映画史上の名作。

最近「ルパン三世カリオストロの城」見たばかりで、BGMがとてもルパンっぽいなと感じた。ベースとかクラリネットのトリルとか。音楽担当は大野雄二
画質はDVDよりはよかったけど、特別に良いとも感じなかった。だが、以前見たものよりは鮮明な印象。
やはりこの時期の市川崑は画が劇的に決まっている。カメラ位置を変えて何度も同じカットを撮って編集。言い争いとか修羅場とかで効果的。
サブリミナルぎりぎりでイメージ写真や金田一さんの耳や目の映像を挟む。これ以前にそんな映像作品を残した人っているの?市川崑の残したものは偉大。
アガサ・クリスティでもギスギスした遺産争いの現場を何度も読んでるけど、日本の場合「犬神家の一族」がすべての始まりか? 

そこに黒頭巾の遺産相続候補者がいる。映画冒頭でいきなりご臨終の犬神佐兵衛の長女松子の長男・佐清(スケキヨ)だ。
出征し戦場で顔面に大やけどを負ってしまったという人物。なぜこんなハンデを背負う羽目に?自分ならなるべく安全な場所を逃げ回りたい。
黒頭巾のしたからさらに白いゴムマスク。日本のミステリー史上、日本映画史上屈指の名シーン。怖い!スケキヨというキャラだけが独り歩きして有名になってしまった。
「青沼静馬さ!」のシーンもさらに怖い。高校時代この言い方をよく真似してたw
この池に逆さに突き刺さった死体が怖い。これ、崖から落としたからこうなったらしい。
底に藻が絡まり合って密集しているからこうなるそうだが、最近になって横溝正史の諏訪湖を舞台にした「鬼火」を読んだら同じような設定になっていたことを知った。「鬼火」も顔をやけどしたゴムマスクの男が入れ替わるという要素がある。
ヒロイン野々宮珠世を演じたのは島田陽子。この人だけが「松竹」とカッコ書きされている。当時の映画女優のシステムをよく知らない。
ずっと目を見開いていて怖いw 乃木坂で言ったら堀未央奈。
かなり高い精度で横溝ヒロインを演じていて感心するのだが、男性から見て理想的すぎてあまり人間味を感じない。

そういえば那須ホテルの女中(坂口良子)が今見返すと雰囲気がかなり和田まあやっぽい。すっとぼけた天然女中で面白い。こんな可愛らしかった人もやがてお婆さんになって死んでしまうとか、現実は悲しい。この映画の出演者の多くがすでに鬼籍に入っている。

犬神小夜子は体型も顔も雰囲気もすべて尾関梨香に似ているw
刑事にひとりポルポト派の兵士のような顔をした棒演技がいるのだが、この人がプロデューサー角川春樹だったw
松子夫人が今見るとサイコパスっぷりが酷い。二人が殺されて「もうスケキヨと結婚するしかないわよね」「黙ってないで何かおっしゃい!」と珠世に迫るシーンとか「何言ってやがる」と突っ込んだ。
もう煙草盆でキセルを吹かす着物姿のご婦人とか絶滅してしまった。この高峰三枝子の映像は日本の遺産。
橘警部(加藤武)は高慢だけど仕事熱心で根はいい人。自然と金田一さんの価値を見出し頼ってる。自分にとってこの人は石坂浩二と並ぶ金田一スター。
自分、近年になるまで犬神佐兵衛翁が三國連太郎だと気づいてなかった。自伝の古写真が今見ると合成写真っぽかった。

松子竹子梅子の3姉妹が青沼菊乃を襲撃するシーンは「TRICK」でもパロディになっていたけど、やっぱり笑ってしまう。この演出は何なん?

「おまえたちを呪ってやる!」人からは呪われないようにしないといけない。
信じられないほど多数の日本人から呪われている竹中平蔵はどういう気分なんだろうか。

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