中央公論2012年8月号増刊「日本国の失敗の本質Ⅱ」を手に入れたので読む。
日本の敗戦をテーマにした本はこれまでも読んできた。これも自分の知識を埋めてくれそうなので手に取った。知らなかった多くの知識を得た。活字で読んで名前だけ知ってた人たちの写真があって良い。
台湾沖航空戦の戦果誤認がレイテ決戦の悲劇の原因になっていたこと。戦略的意味が大してなかった中国大陸打通作戦(一号作戦)が国民党軍に75万人の人的損害を与え、英米の国民党への期待感を失わせソ連を参戦させ、共産党中国を誕生させる原因となったこと。などを学んだ。
だが、一番読みたかったテーマは「陸軍エリート将校団のクーデター秘史」
ここ、松本清張「昭和史発掘」で読んだ箇所のさらなる補完。
橋本欣五郎の「桜会」は親睦団体に過ぎないし、国会を占拠しても首相指名はできないので、松本清張の話は珍説?!
そして、3年の間に起こったテロとクーデター(未遂)は警察(内務省)と憲兵(陸軍)にバレバレだったはず。なので、警察憲兵の双方に通じていた永田鉄山が扇動していた?!事実、誰も処罰されてないし永田の死後ピタッと止む。
「日本の一番長い日」で有名な御文庫包囲と宮内省突入は玉音盤奪取が目的ではなく、木戸内大臣捕縛し松岡洋右を首相にするよう昭和天皇の説得させるため?!
「東条英機暗殺計画の顛末」
ヒトラー暗殺計画みたいなドラマチックな話があるわけでなく、倒閣運動と並行して「退陣要求に応じなければ斬る」という計画があったって話。
「繆斌工作 棒に振った最後の和平機会」
軍部にはソ連を仲介役に英米との講和を期待するムリ筋にこだわったアホが多かった一方、蒋介石の重慶国民政府による単独講和実現に向けた繆斌(みょうひん)工作のほうがまだマシだったように思える。
国民党政府には日本がこてんぱんにされると共産党が勢力を増すという心配があった。サイパン陥落で東條内閣が総辞職した後に成立したのが小磯國昭内閣。情報局総裁緒方竹虎が小磯を動かして講和の糸口を探る。だが、「支那人のいう事は信用できない」「南京政府を裏切れない」と重光、梅津、米内、木戸みんな繆斌との交渉に反対。
繆斌も「日本の軍人、外交官は信頼できない」と小磯首相に期待するも、まったく権力がなくて失望。小磯も昭和天皇に奏上するも「すでに重臣たちの毒が回ってた」と断念。閣内不一致で総辞職。
重慶はアメリカと緊密に連絡していた。原爆が完成すると対日講和の線は切断された。
繆斌は日本の敗戦直後に漢奸として逮捕銃殺。
自分、この本を読むまで繆斌工作という言葉も知らなかった。戦争を終わらせるために蜘蛛の糸を頼った人たちの努力は無駄になった。緒方「庸人国を誤るの悲史の一例」
「敗戦参謀たちの戦後サバイバル」
敗戦後、参謀本部にいたエリート軍人たちはGHQの参謀二部G2ウィロビー少将の反共工作機関として占領軍に協力していく。その最初が有末精三。マッカーサーを厚木に出迎える厚木委員会として米先遣隊と接触したのがGHQに食い込む最初の機会。
そして今年もまた3月11日がやってきた。この日は戦争とは別に、もうひとつの日本の敗戦日だと思っている。
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