2018年2月7日水曜日

フィリップ・K・ディック「偶然世界」(1955)

フィリップ・K・ディック「偶然世界」(SOLAR LOTTERY 1955)小尾美佐訳の1977年版ハヤカワ文庫(2002年第11刷)がそこに100円で売られていたので連れ帰った。

これがフィリップ・K・ディック最初の長編作品らしい。それほど読まれている作品でもないけど、少なくない人が感想を書いている。
だが、誰の説明を読んでもこの作品についてビシッと正しく言い当ててない気がする。

とにかく読んでいてぜんぜんイメージができなくて困惑。ブレードランナーの世界を思い浮かべて読んだけど、クイズマスター?ティープ?もう何が何だかw
本邦初訳のときは「太陽クイズ」というタイトルだった。それ、もっと作品をわからなくさせる。

旧マスター陣営が、無作為化された予測できないパターンの戦略(ミニマックス戦略)で動く暗殺者を送り込む。

だが、ずっと技術者の失業と再就職の話になってる…。みんな尊大で好きになれない奴らだ。
殺し合いアクションがあったかと思えば法解釈のテーブル論議。よく意味の分からないSF映画を見ている感覚。

一向に面白くなってくれないまま終わったw 雑多すぎる内容でどこに焦点をあてて説明したらいいのかもわからない。

2 件のコメント:

  1. 一応、SFメインなので、ディックは全て持っています。新訳が出ると買い替えています(でも全部読んだわけじゃないです) 作品は安っぽいB級SFの設定を借り乍ら、本物と偽物、精神崩壊・現実崩壊がメインテーマとして延々繰り返されます。しかし半分以上がクズです。話が支離滅裂で主題がズレたり、話があさっての方角に飛んで行って戻らなくなります。バランスが良いと大傑作、残りは愛すべきB級作かD級作です。
    概してハヤカワから傑作が、創元からマニアックな作品が多く出ています。一旦ディックの世界に引きずり込まれると、話が支離滅裂でも妙に惹かれるようになります。
    残念ながら「偶然世界」は愛着のわかない部類でしょうかね。最初の作品だから毒も色も薄いかもしれない。
    世間的には最高レベルはハヤカワから出ている「ユービック」です。アニメのような薄っぺらい世界で「生か死か」が深刻に語られ、生き延びるためのアイテムがどんどん退行していく悪夢のような作品です。他には「火星のタイムスリップ」。これがわたしのベストのディック。近未来の火星が舞台で、終盤に自閉症の少年の眼で見る現実の崩壊が衝撃的です。
    「高い城の男」はディックの出世作。第二次世界大戦で日本とドイツが勝利し、両国がアメリカを占領している世界を描いています。
    「パーマーエルドリッジの三つの聖痕」「流れよ我が涙、と警官は言った」「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?(ブレードランナー)」など、傑作には格好いいタイトルがついています。

    ディックはむしろ短編小説が面白い作家ですよ。「トータル・リコール」「マイノリティ・リポート」など映画化された作品は短編の方が多いし、ハヤカワから短編集が沢山出ています。

    いつもながら長々と偉そうに書いて申し訳ありません。良い作品に巡り合えるといいですね。

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    1. とても詳しい解説をありがとうございます。ちょっと検索してもわからないようなことばかり。すごい。

      「電気羊」「流れよ我が涙」は有名なので読みたいとは思ってました。古本屋だとなかなかSFは在庫がないです。手放す人が少ないのかと推測。

      おすすめの「ユービック」「火星のタイムスリップ」「高い城の男」も面白そうなので探そうと思います。

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