2018年1月24日水曜日

ロバート・A・ハインライン「ルナ・ゲートの彼方」(1955)

ロバート・A・ハインライン「ルナ・ゲートの彼方」(1955)という本がそこにあったので連れ帰った。100円。
TUNNEL IN THE SKY by R.A.Heinlein 1955
巨匠ハインラインの1955年のジュブナイルSF長編。なんとこの創元SF文庫版が本邦初訳だという。四半世紀の間にすでに名作扱い。
自分が手に入れたのは森下弓子訳1989年版創元SF文庫の2011年第10刷。原題と日本語タイトルがまったく違うじゃん!

人口爆発問題を「どこでもドア」で解決した未来。パトリック・ヘンリー・ハイスクールのロッドは恒星間ゲートの向こう側にある未知の惑星でのサバイバル試験を受けることになる。

最初のほうこそSFっぽく、自分の想像力ではよくイメージできないところも多かったのだが、原始のジャングル?でのナイフ1本サバイバル生活がスタートすると面白い。何か事故が起こって生徒たちを回収できなくなった?

ジャックと出会うまでにクラスメートの無残な死体も目撃…。ジュブナイルSFにしてはかなり過酷。
人数がいたほうが生存に有利と判断したロッドとジャック。狼煙をあげて仲間を呼び寄せる。

途中からヴェルヌ「十五少年漂流記」(1888)やゴールディング「蝿の王」(1954)の影響もあるかもしれない。生存者だけで自治コロニーを形成するのは「アイアムアヒーロー」を思い浮かべた。

仲間が増えると反乱分子も発生。指示に従わないものは追放。リーダーを選挙で決めようと言い出した新参グループに負けたりして、こいつは派閥同士で殺し合い?と思いきやそうはならない。
生存者たちがみんな学と教養があるので、法治をすすめようとして委員会がつくられる。見張りや狩りや建設作業の分担、そして働かない怠け者の発生…。

ラストが「えっ…?」ってゆうドライな現実への急な引き戻しで呆然。絶句。

これ、自分が読んだことのないタイプのSFで面白かった。だが、やはりこの時代のアメリカ人代表ハインラインらしい軍国主義っぽさも感じた。

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