2018年1月14日日曜日

黒島結菜「オケ老人!」(2016)

黒島結菜の出演作に「オケ老人!」という映画があるので見てみる。なんと杏の初主演映画だという。そういえば自分はこの人の出演作を1本か2本ぐらいしか見たことがない。

この映画、自分はなかなか見ようと思えなかった。まず、老人たちを笑うような映画は見たくない。
そして、楽器の経験のない役者がクラシック音楽を演奏することはとても難しい。きっとあんまり細かいところまでは行き届いていない。
だが、そこは目をつぶって心温まるコメディー映画だと期待して見てみる。
新しい街、新しい職場、心機一転、学生時代にやっていたヴァイオリンをまた始めたい!というヒロインは地元オーケストラの演奏会を聴く。

ベルリオーズに興奮し感動する杏を真正面から撮影しているのだが、これが最初のカットから「え?」というぐらいにヘンな顔に映ってる。

杏はもともとちょっとユニークな顔なのだが、色が浅黒くヘアスタイルがまるで河童みたいで、毛糸のベストのようなものを着ている。たぶん明らかにちょっとおっちょこちょいでダサイ人のようだ。

だが、スタイルがものすごくよい。橋を渡り街を歩く姿はさすがモデル女優。

公民館的な場所でのヒロインとオケのファーストコンタクト。あれ?やってくるのがみんな老人たちばかりだぞ?なんかヘンだぞ?
交響楽団とフィルハーモニーという、クラシック音楽の世界ではありがちな団体を間違えて、老人たちの憩いの場的な同好会オケに入団してしまっていた。このへんのエピソードは面白い。だが、間違ってもあの人数の同好会がそんな立派な名前をつけるはずがない。

森下能幸演じるウォーホルみたいな老人がリアルに公民館にいそうw 石倉三郎もだけど、こういう美意識のまったくない人はオーケストラなんてぜったいにやらないと思う。あんな部屋着姿で練習にやってくることもぜったいないと思う。
ヒロインが利用団体の掲示を二度見して確かめるシーンはあまり笑えない。たぶん劇場でもスベっただろうと思う。

それに、あんな編成でやれるオーケストラレパートリーなんて1曲たりともない。1曲たりとも演奏できる体力もない。威風堂々をやるだと?練習もなくいきなり合奏。
で、やっぱりわかりやすいコントのような演奏。あんな広い講堂を借りてるのにろくに練習もせず漬物とか食べだす。こんなの音楽人はぜったいしない。
クラシックに少しでも詳しい人なら、こういうの、たぶん誰も見たくない。

心の声でツッコミまくる杏自身も何も弾けてない。これではちゃんとしたオケには入れない。ボウイングは粗が目立つのであまり映さないほうがいいのに。

次の展開が全部予想通りw あんまり演出とか練り込んだ感じがしない。だが、それだからこそわかりやすくて笑えるかもしれない。
ヒロインは高校の数学の先生だったのか!学校シーンでやっと黒島結菜登場。セーラー服の居眠り生徒。老指揮者(笹野高史)の孫であると自己紹介。いやあ、素朴で天真爛漫な笑顔が素晴らしい。
それに黒島は演技がとても見栄えする。明らかに他の誰より演技が上手。それはないわあって脚本で黒島が適切で良い演技をしている。

とつぜん団員が死んでしまうエピソードで笑いをとるとか、妹の結婚祝いに木彫りの男根とか、短いストロークの突発的笑いに感心しない。ロジックのようなものがない。見る気をなくす。
このヒロイン先生、音楽がやりたいなら高校で部活動の指導でもやればいいじゃんって思う。そのほうがマシな楽団員が集まる。

ガチでやってるアマオケのオーディションと練習が殺伐すぎ。あんなに練習厳しいなら公務員とか自営業とかしかやれないな。何も楽しくなさそう。若くて明るい女子団員がいたらもっと温かく見守るだろ普通。アマチュアのトレーナーがそんな厳しくするなよ。
一番大事な練習の日に遅刻とか怖くて見てらんない。

ひょっとして、この映画作った人たちも老人たち?そんなセンスに満ちている。スベリたおしてる。夢オチシーンとかいらない。本や漫画で読むか、せいぜい深夜ドラマなら笑えるかもしれない。
だが、黒島、笹野、杏、左の4人でのラブホテル前での盗撮エピソードは雑なコントとして笑えた。
杏が熱出して倒れて黒島と坂口が突然お見舞いにくるシーンも面白かった。テーブルの下をくぐらないと部屋に行けないのかよ。黒島「ひょひょひょ」

笹野さんが病室で目を閉じて「死んだ?」というシーンも唐突にミニコント。
どれも数十秒単位で見ると面白いけど120分の長編としてみるとそれほど印象に残らない。
やっぱり予想外と凡庸さ、ほんの少しの恋愛要素のバランスはいいかも。意外に笑えるところもあるし。

あの団員たちはドヴォルザーク1曲演奏しきる体力はないと思ってたら第2楽章だけ?よくイングリッシュホルン持ってたな。
雷でホールが停電。そんなの戦時中のベルリンやロンドンみたいだ。楽譜見えなくても演奏できるの普通だから。そんなにブラボーでもない。

ないわぁ…と思いながらみていたけど、こんなもんかと慣れたら途中から面白くなってきた。杏が映画の中でだんだん素敵に見えてきた。なんかガッキーっぽいヒロインだった。

年寄りたちに若者が事故的に紛れ込む困惑と騒動。そして静かな情熱が周囲を変えていく。
エリートオケと年寄りダメオケを対比させるのはロシア映画「オーケストラ!」を想わせる。

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