2017年12月25日月曜日

横溝正史「黄金の指紋」(昭和27年)

横溝正史作「黄金の指紋」の昭和53年角川文庫の平成8年第28刷を手に入れた。

秋キャンプに行った関東地方某県のBOで260円だった。新品同様の1冊だったし、いつもBOにはお世話になっているので、たまには100円以外の本も買おうかw

横溝先生のジュブナイル探偵小説。本当は順番に読んでいきたいところだが、古本屋でもなかなか見つけられない。なので見つけたものだけ読む。

江戸川乱歩の少年探偵団シリーズを読むワクワク感で読み始めた。これは「怪獣男爵」「大迷宮」の続編ということだが、びっくりした。まるで大人が読む内容がないw

乱歩の「明智小五郎 VS. 怪人20面相」の横溝版が「金田一耕助 VS. 怪獣男爵」。

夏休みを母の兄の住む岡山の半島で過ごしていた邦雄少年、夏の終わりに瀬戸内海で座礁難破現場に遭遇。脱出した男から箱を託される。「この箱を金田一耕助という人に渡してくれ…」
新幹線で岡山から東京へ移動するので、単行本化にさいして時代に合わせて書き換えられたに違いない。

悪者も2グループ存在する?「三つ首塔」「白蠟変化」みたいな横溝先生お得意の悪者バトルロイヤル。各シーンが断片的に描かれる。どう繋がるのか?もやもやしながら読む。

真の敵ボスは明晰な犯罪頭脳にゴリラの体を持った怪獣男爵。金田一さんと等々力警部が、「黄金の指紋」のついた燭台と、玉虫侯爵の孫娘の行方を追う!(玉虫って「悪魔が来たりて笛を吹く」にも出てくる名前だな)

いや~、展開がとにかく都合がいい。昭和20年代の中学生読者なら、この程度で良かったのかもしれないけど、スレまくった今の若者たちは満足できないんじゃなかろうか。
ヒロインの小夜子が美少女ということだけど、最初から最後まで眠りっぱなし。

金田一さんの詰めの甘さが酷い。小夜子が最後まで生きてるのは奇跡。逃亡しようとして別の敵に捕まって袋詰めにされて東京湾に沈められるw
小夜子を助けるために、怪獣男爵に殺されるかもわからないのに平然と何の罪もない少女と入れ替えるなよ。民間人が逃げ惑う中、発砲許可を出すとか、等々力警部も見損なったわw ツッコミどころがいっぱい。破綻が多い。

ライオンの皮に人間が入ったところで本物のライオンとは思わないだろ。
それに、鑑識課が燭台の小夜子の指紋を型を取るなり写真に撮るなりしたのか?
世間を騒がせる怪獣男爵の手下は音丸の1人だけ?

怪獣男爵が燭台をねらう理由が…、え、そんなこと?小学校低学年向けか。
半分ほど読んだ段階でもうどうでもよくなって読むスピードを上げたw

変装して敵アジトに潜入する金田一さんとか、ピストルを構える金田一さんとか、いろんな金田一さんがいるんだな。

PS. 12月21日に横溝正史の名前がツイッターのトレンド入りをしていて驚いた。なんと、戦時中に新潟毎日新聞に連載された幻の小説の原稿が発見され、国会図書館のマイクロフィルムで全編確認されたという。来年2月に単行本化されるという。そんなことが今になってもあるんだな。

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