2017年12月14日木曜日

小野不由美「黒祠の島」(2001)

小野不由美「黒祠の島」(2001)の新潮文庫版がそこにあったので、きまぐれで読んだ。
小野不由美という作家の名前は以前から知っていたのだが、実際に読んでみたのは初めて。たぶんホラーだと予想して読み始めた。

主人公の式部は東京で調査探偵事務所をやっている。かつて一緒に仕事をしたライター葛木志保が帰省すると言い残したまま帰らない。九州北西部にあるという小さな孤島・夜叉島に消息を求めて上陸。

本土から島に渡るフェリーの窓口で係員が確かに都会からやってきたらしき若い女二人連れを見ていた。
だが、島へ渡るとぷっつりと消息が途絶える。みんなが顔見知りの小さな島の島民の誰もがそんな女は見ていないと口をそろえる。

それに、島の神職の人によれば、そこは明治の国家神道の社格制度への統合に与しなかった黒祠の島だという。よそ者を嫌い、誰も本当のことを話そうとしない。島の有力な網元だった家が圧力をかけている?

式部は島に葛木の生家らしき廃屋があり、そこで凄惨な殺人があったらしいことに気づく。
島の診療所に詰めているよそ者の若い医師によれば、嵐の夜にガソリンで焼かれ逆さづりにされていた凄惨な死体を診たのだが隠ぺいされ警察にも通報していないらしい。この本では警察が完全に不在。
どうやら葛木志保は死んだ?4人の殺人にかかわった犯人はだれ?

これ、序盤から面白いけど、中盤も終盤もぜんぶ面白い。ぐいぐい読み進められれる。
島独自の宗教を設定。現代日本でありながら神領家と馬頭夜叉なる鬼神が島の悪を裁く。
今まで読んだどの本にも似ていない。

松本清張と横溝正史と江戸川乱歩を合わせたよりも面白い怪奇ミステリーホラーだった。

しかも読みやすい。登場人物が膨大で混乱もするのだが、大事なところは念を押すのでわかりやすい。超絶面白い!じわじわ怖い!
実はアレがああなってた。大興奮!ラストもおしゃれ。

探偵式部、そのまま「散歩する侵略者」の長谷川博己で脳内再生してた。金田一さんみたいだった。映画化希望。

今まで日本中の村や島を旅してきたので、自分にはこの本の世界がよくイメージできた。
グーグルで見つけたような小さな集落とか、ふらふら行ってみることはやめておいたほうがいいかもしれない。

大絶賛!w 参りました。小野不由美、今まで読まずにいたのが不思議。これから探して読み進めていこうと思う。

2 件のコメント:

  1. 泊まり出張のお供に少女向けの文庫『月の影 影の海』をキオスクで買ったのが最初。
    いわゆる「十二国記」シリーズの最初の長編でした。中国と日本の中間の異界に広がる中華風世界にテレポートしてしまった女子高生の物語。
    とても少女向けとは思えぬ骨太で容赦ない過酷な展開。(今では一般向けの講談社文庫版があります)。後半の怒涛の展開にすっかり魅せられました。自分の拙いけど数だけは自慢できる読書歴のBEST10に数えられる感動が在りました。ヒロインに惚れました。ぜひお試しくださいませ。「十二国記」シリーズは、巻ごとに主人公が異なり「図南の翼」なども素晴らしいのですが、やはり最初が一番。

    小野不由美はキングに挑戦した弁当箱みたいに分厚い吸血鬼小説「屍鬼」や、異界東京を描いた「東亰異聞」も評判になりました。
    「黒祠の島」も期待して読んだ記憶があります。この年の各社のベストテンの上位だから評価も高かったようです。
    旦那の綾辻行人よりずっと小説は上手いんじゃないでしょうか。

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  2. 「東亰異聞」はもう読みました。面白かったです。
    「屍鬼」「十二国記」は長すぎて手を出せない感じでしたが、単独で読んでもよさそうならチェックしていこうと思います。
    綾辻行人はまだ1冊も読んだことないですねえ。

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