2017年12月29日金曜日

荒木飛呂彦「バオー来訪者」(1985)

自分はほとんどマンガを読まないのだが、たまたまこいつを見つけてきまぐれで買ってしまった。荒木飛呂彦「バオー来訪者」の2000年集英社文庫版。

実はこのマンガ単行本を子供の頃持っていた。それ以来で読み返した。子供にとってトラウマ漫画だった。残酷シーンが多い。

東北のローカル線を走る貨物列車のシーンからスタート。「バオー来訪者」連載開始時はまだ国鉄の時代。

初めて読んだ当時はもちろん気づかなかったけど、どこか下山事件や松川事件を連想させる。ドレスが731部隊だし、霞の目博士が石井四郎。謎の仮面幹部たちがアメリカ人に見えるし、暗殺部隊もほぼアメリカ人だし。戦後の闇を引きずった作品に思える。松川事件でも目撃者は殺されたという話がある。

この物語のヒロイン・スミレちゃん9才(超能力者)が初登場シーンから可愛らしい。昭和を感じる劇画タッチだがとても絵柄が魅力的。
秘密組織ドレスの若い美人工作員が江戸浮世絵の美人画のよう。どこかまさみに似ている。(まさみにはいつか女スパイとかヒール役もやってほしい)

主人公・橋沢育郎17歳はドレスによって驚異の寄生虫バオーの人体実験にされる。この育郎くんがとても紳士。こどもながらにとてもかっこいいと思ってた。

子供の頃はわからなかったけど、この物語の舞台は北上山地から陸中海岸にかけてのエリア。そういえば荒木飛呂彦は仙台の人だった。岩手はバオー来訪者で地域おこしとかしないのか?

「魔少年ビーティー」から「バオー」にかけてが荒木飛呂彦の画のタッチの激変期。バオー連載開始時はどこか白土三平とか昭和少年マンガの伝統っぽい劇画タッチ。単行本ではところどころ育郎の顔のタッチが修正されている箇所がハッキリ目立つ。

「バオー来訪者」連載終了から32年。橋沢育郎とバオーは今も陸中海岸の洞窟の海底に沈んでいる。もしこいつが目覚めたら人類は終わる。

0 件のコメント:

コメントを投稿