2017年11月29日水曜日

横溝正史「迷宮の扉」(昭和33年)

夏フェスで福島に行ったとき立ち寄ったBOでこいつを手に入れた。
横溝正史「迷宮の扉」角川文庫(昭和54年版の昭和57年第10刷)を100円でゲット。

どうやらこの作品は横溝先生のジュブナイル推理ものとして昭和33年に高校生向けの雑誌に掲載されたものらしい。

三浦半島を旅行していた金田一さん。嵐に遭い、城ヶ島の灯台の近くにあるという竜神館と呼ばれる屋敷へ逃げ込む。その直後に一発の銃声と共に倒れ込むようにやってきた男、そこで絶命。

そこにはシャム双生児として生まれ、後に分離された日奈児という15歳の少年がいた。その後見人の老人によれば、三浦半島の東京湾を挟んで対岸の、房総半島の先端の洲崎灯台の近くにあるという海神館という屋敷に、シャム双生児のもうひとりの少年・月奈児が住んでいる。

城ヶ島灯台も洲崎灯台も、自分は両方に行ったことがある。金田一さんは城ヶ島から洲崎へ行くのだが、昭和33年当時どうやって出かけていったのか、その経路が不明。

海神館で謎の火災。そして竜神館へ戻ると人々が消えていた…。
そして、舞台は吉祥寺。双生児の父・東海林竜太郎の莫大な遺産相続についての異常な遺言…。
これ、高校生むけということだが、がっつり大人向け。遺言状でその場の人々がギスギスする展開が犬神家。

日奈児少年が殺され、看護婦が首を絞められ殺されそうになり、今度は月奈児少年が殺され、竜太郎の甥までもが病院で殺される…という連続殺人。

ジャケットイラストからてっきり洞窟を探検するような古風な少年向けスリラーかと思った。だが、イメージと違っていた。完全に大人向け。

ラストは予想外のことが起こる。だが、面白かったか?と聴かれると微妙。
二人の少年が殺される原因をつくった父の言動が軽くて「え?!」って疑問に思った。自分の息子の命をなんだと思ってる?
それに爽やかに次の恋をしてる。こんなん、がっつり怒られていい。

余白に2本の短編も収録。
「片耳の男」(昭和25年)少女誌に掲載された短編。アイドル女優でドラマにできそう。
「動かぬ時計」(昭和2年)これも少女向け。横溝正史とは思えない作風。ミステリーではなくファンタジー。

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