有島武郎(1878-1923)が1920年(大正9年)に「赤い鳥」に発表し、1922年(大正11年)に叢文閣(東京市牛込区神楽町)より刊行された「一房の葡萄」を初めて読んだ。4本の短編を収録。
これも昭和49年ほるぷ社名著復刻版がそこに250円で売られていたので購入。初めて世に出た姿そのままで手に取り読めるって素晴らしい。装丁も挿絵も有島による1冊。当時の定価は金壱圓弐拾銭。
「行光、敏行、行三へ」と、三人の息子へ捧げられている。
有名な本なので少しは知ってる話なのかな?と思ったのだが、自分は今までまったくこの話に触れたことがなかった。クラスメートの持っている絵の具がうらやましくてほしくて盗んでバレて…という鬱系児童文学。
登場する先生がたぶん光に包まれていように美しい。自分のイメージだとまさみかガッキー。
だが、職員室から手を伸ばして葡萄をもぎ取って与える…って、そんなことが?って思う。
この話は横浜の山手が舞台。クラスメートに外人がいる。自分は一度だけ横浜山手の洋館を見に行ったことがある。なんとなく地理的イメージはできた。
「溺れかけた兄妹」はタイトルそのまんまの話。9月の土用波の時期に人気のない海水浴場に子供だけで行って大ピンチ!恐怖体験。
妹を助けられない兄の心の声が綴られる。登場人物たちのその後がアッサリ書かれてる。
水の事故に備えて、夏になる前に親子で読むべき教訓の1本。
「碁石を呑んだ八つちやん」もタイトルそのまんま。3歳の弟が碁石を呑みこんでパニック!恐怖体験を子供目線で描いた1本。ぶっちゃけこれは婆さんが悪い。子供が呑み込みそうなものを与えるな。
「僕の帽子のお話」は父親が買ってきたお気に入りの帽子が嬉しくて手に持ったまま寝ていたら…という夢オチ話。
4本とも子供周辺の世界をリアルに描いて、「世界には愛しかない」という結末。大人こそこの本を読むべき。
小学生時代、こんなことが恐怖だったなと思い出す。大人になれば忘れてしまうことだが、有島はよくこんな子供の感情が書ける。
0 件のコメント:
コメントを投稿