てっきりクラウゼヴィッツに関する雑学本だと思っていた。この本の3分の1は第2次大戦終結の1945年から1991年まで、毎年ごとの世界紛争地図がメイン。
各年ごとの地図を注意深く読んでいると、第2次大戦がかすむほどに毎年毎年世界のどこかで内戦、内乱、クーデター、要人暗殺、テロ、国境紛争、独立戦争、宗教対立、民族対立、虐殺事件が起こっている。
植民地と旧宗主国、中国と隣国すべて、ソ連と隣国すべて、ローデシアと隣国すべて、南アフリカと隣国すべて、イスラエルと隣国すべて、中南米すべて、インドとパキスタン、アルゼンチンと隣国すべて、トルコと隣国すべて、イランと隣国すべて、マレーシアとフィリピン、ベトナムとカンボジアとラオスとタイ、紙面が足りないほど世界中が紛争している。隣国同士が争ってるのは世界地図を見れば「よくあること」。
ソ連は東欧諸国を自分たちのものだと考えていた。ハンガリー、チェコスロバキア、ポーランド、東ドイツ、ブルガリアの政治家たちも殺されまくってる。KGBはブルガリア秘密警察とローマ法王暗殺未遂事件も起こしてる。ポーランド出身のヨハネ・パウロ2世は自主管理労組のワレサを支持してたから狙われたんだな。ソ連、ロシアは世界から嫌われて当然。
19世紀の始めにクラウゼヴィッツが書いたことがそのまま20世紀後半にも当てはまっていることを語る本かと思いきや……この本の結論は、
「戦争論」は、戦争の性質を解き明かした万人普遍の理論ではなく、どのように戦争を正当化し、挑発するか、という目的で書かれた個人的演説だったのであると言い切ってる。クラウゼヴィッツの理論が合ってるんじゃなくて、後の政治家、軍人たちがクラウゼヴィッツの本を忠実に守ってるって、逆の発想の結論。西側も東側も、共産主義も、敵を作って戦争をしたがる政治家すべてを批判してる。すべての「クラウゼヴィッツ人」を。
トルストイが「戦争と平和」でクラウゼヴィッツを批判してるって知らなかった。
巻末にはなぜか暗号を解く天才CIA女スパイのエピソードと、学校じゃ教えてくれない「水爆の作りかた」まで。
筆者の文章は上手いと感じたけど、それほど大切な1冊にはならなかった。ただ、第2次大戦後も世界は酷いということは改めて強く認識した。
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