2015年6月7日日曜日

実相寺昭雄 「屋根裏の散歩者」(1992)

自分が小学5年ぐらいのとき、「少年探偵団シリーズ」で江戸川乱歩に興味を持ち、商店街の小さな本屋で角川文庫の「屋根裏の散歩者」を買おうとしたとき、おじいさんの店主がちょっと謎の対応をしたことを覚えている。しばらくパラパラとめくって本をながめていた。

当時は何なのか意味がわからなかったのだが、今になって理解できるようになった。あのおじいさんは小学生にこの本を売っていいものなのか迷っていたんだと思う。

実相寺昭雄監督による「屋根裏の散歩者」(1992)のDVDを見つけたので観てみた。小学5年生のとき以来ぶりにこの作品に触れる。内容をよく覚えていない。実相寺監督というと自分は「姑獲鳥の夏」と名作の誉れ高い「ウルトラセブン・メトロン星人」の回しか見たことがない。きっとキテレツな映像で江戸川乱歩の世界観を見せてくれるに違いない。

オープニングから「あぁ、これこれ!」っていう実相寺ワールド。主演は三上博史

厭世気分にどっぷり浸った大正時代の高等遊民メガネ男、「あ~、くそ面白くないわ、こんな世の中。もう死んだほうがマシかな」。酒の席でもひたすらタバコふかしてるだけ。東京本郷の下宿ってこんな感じだったんだな。こんな場所から出勤してたんだな。厠の鏡をねっとりと這うカタツムリの画。

なぜかドラえもんのごとく押入れにいる主人公、屋根裏から他の下宿人たちのプライベートをのぞく。大正時代の個人のプライベート保護はこんなにも脆弱。この映画、登場人物全員がキモい。下宿の男たちとフリーセッ○ス状態で廊下をハダカで歩くおばさんが怖い。

隣の部屋に越してきた宮崎ますみ、初登場の瞬間から妖艶すぎて異常な雰囲気だなと思っていたらやっぱり頭のおかしい人だった。プロのヴァイオリン奏者のはずなのにいっちゃった顔で同じフレーズばかり弾いてる。ちなみに、宮崎が部屋で聴いてるSPレコードはジンバリストのヴァイオリンによる「タイスの瞑想曲」。

嶋田久作が明智小五郎だって?!部屋には犯罪心理学の本が多数。目覚まし時計の件で歯科医(六平直政)の死に疑問を持つ。三上に対してさらっと謎を解いて披露して去っていく。三上ほど社会にも生きることにも適応できないと…どうしたらいい?

70分とちょっとのコンパクトにまとまった映画でサクッと見れる。さすが実相寺監督だったわ。

2 件のコメント:

  1. 実相寺昭雄という名前が既におどろおどろしい。「帝都物語」が一番のヒット作でしょうか、面白かった。「ウルトラセブン」は、実は全話手元にあるのですが、実相寺のメトロン星人と卓袱台の登場する「狙われた街」がやはり一番印象的です。
    私の方は、先週、実相寺監督の71年の「哥(うた)」をレンタルで観たばかりです。白黒でかったるい映画なのですが、主人公の青年の有り得ないほどの偏屈さに次第に引き込まれました。衰弱した青年が延々と寺の石段を(一番下から上まで)這い上がるラストの長回しは鬼気迫るほどで、あまりのブラックさに笑ってしまいました。それにしても、演じていた役者はどんな気持ちだったのでしょうかね。

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  2. 実相寺カントクについて自分はまだ何もつかんでないけど、「狙われた街」はちゃぶ台の向こうに侵略してきた宇宙人とか、ボロアパートから宇宙船とか、この人のすごい発明ではないかと。
    これから変な作品を探してみたい。「帝都」はまだ見てない。TSUTAYAになかったかも。

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