2013年9月21日土曜日

松本清張「奥羽の二人」

松本清張「奥羽の二人」(講談社文庫)という短編時代小説集を手に取ってみた。清張が人気作家になっていく前の昭和28年~33年に文芸誌に掲載されたものをまとめた1冊。

安国寺恵瓊(あんこくじえけい)について書いた小説がないかなって探してた。この本の「背伸び」という短編がまさにそれ。自分がこの人物を知ったのはNHK大河ドラマ「天地人」の関が原の戦いの回の冒頭解説ナレーションが最初。石田三成、小西行長とともに京都六条川原で首を斬られた人物。

関が原から敗走する恵瓊に代わって清張はつぶやく。「一枚の札の表を出すか、裏を出すか、たったそれだけの間違いをしたあとの気持に似ていた。単純な、それだけの錯誤で、死に追いやられていることが奇妙でならなかった。」 と推理小説の登場人物のように語らせてる。毛利輝元と秀吉の間を行き来して交渉役として頭角を現していくとこと、関が原のことだけしか書かれていない。恵瓊について詳しく知るためにはそれほど役にたたないと思われる。

自分がちょっと関心があったマイナー戦国武将たちを、清張らしい切り口で心理を描写する。あっという間に読める。
  • 「背伸び」 安国寺恵瓊の野望と転落について書いている短編。

  • 「三位入道」 日向の伊東義祐の晩年を描く。

  • 「細川幽斎」 朝倉、信長、秀吉、家康と渡り歩く幽斎。

  • 「奥羽の二人」 蒲生氏郷伊達政宗の争い

  • 「群疑」 家康の元から秀吉へ出奔した石川数正のアテの外れた思惑。

  • 「英雄愚心」 秀次とその侍妾30余人を容赦なく殺した秀吉の晩年

  • 「転変」 秀頼母子を見殺しにしたことを苦悩し、家康からも見限られていく福島正則

  • 「武将不信」 家康に取り入るためには可愛いわが子も殺した最上義光

  • 「脱出」 古今武家盛衰記をネタに古田重恒と近臣山田十右衛門の事件

  • 「葛」 官位ほしさに柳沢吉保に賄賂を贈る滑稽な噺
福島正則が一番人間的だけど、ケンカ相手の首を執拗に求めて家康の不興を買っていく。最上義光の人間性も酷い。

でも、戦国時代でいちばん酷いのは秀吉。秀次と侍妾の惨殺は教科書にちゃんと書いたら誰もヒーローと見なさない。それにしても戦国時代に人道もなにもない。

3 件のコメント:

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    福島正則…たしか良純がやってましたね。父が言っていたのですが、大河ドラマの脚本って女性が書くと戦国武将や天下取りが悪く描かれたり、下手に和歌や俳句といった文化の取り入れがあるみたいです。つまり男子が憧れる戦国の世ではなく、ブロガーさんが書いている教科書に書いてないものが描かれることがあるそうです。
    いずれにせよアドルフ・ヒトラー然り、フセイン然り、残虐な人間が国を治めていたのは変わりないのかと思ったりしてます…そんな世の中は必ず潰れる運命にあるんだなと感じてます。
    私の名前の由来となった信長の家臣、森蘭丸…おじいさん世代だと読むときに森と蘭丸の間に少し間を空けるのではなく、つなげて読むのを最近知りました。

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    安国寺恵瓊。よく分からないし関ヶ原でも戦えなかったし大物感がないですね。
    秀吉に取り入って出世した外交僧・・・胡散臭いけど交渉力があったのでしょう。
    戦うだけの時代に戦わないで収めるのも才能。
    大河ドラマの主役に長宗我部元親をという意見が多いそうです。
    いっそ立花宗茂みたいに絶対に負けない武将が主人公なら見てて楽かもしれない。
    でも山中鹿之助のように終始負け続けの主人公もいいかも。(TVの作り手は困るか)
    関ケ原関連なら、岳宏一郎「群雲、関ケ原へ」(上)(下)。
    間接参加武将まで含めて両軍殆ど網羅したシニカルで斬新な群像劇です。
    上杉景勝、大谷吉継などは魅力的。

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    あ、戦国武将にも詳しい。
    自分にとって大河ドラマは重要。今の明治のヤツは見てないけど。
    次の大河は黒田かんべえ、よく知らない。長宗我部だの北条だの本多だの誘致したい県が多いみたい。

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