2013年7月29日月曜日

「大東亜会議の真実」を読んだ

友人にこの本を薦められたので借りて読んだ。「大東亜会議の真実 アジアの開放と独立を目指して」(深田祐介 PHP新書 2004)

中学までしか日本史を真剣に勉強しなかった自分でも「先の大戦はアジア解放のための戦争」なんて主張すると右翼よばわりされるというイメージは持っている。この本を貸してくれた友人はどちらかというと左派リベラル的発言が目立つので意外なセレクトだった。

驚いた。まったく自分のイメージしていたのと違う本だった。どうしてこんな事実を今まで知らずに過ごしていたんだろう?この本を読む限り、あの戦争がなければインドネシア、フィリピン、ビルマ、インド、インドシナの独立はもっとずっと後になっていたのは事実のようだ。ちゃんと小学校中学校で教えてほしいと思った。「東京裁判史観」というヤツを教えられて育った。日本の戦争は「ファシズムVS.民主主義」だったと。そんな単純じゃない。

昭和18年11月、すでに戦況が日本に不利な状況で、日本と同盟関係にあったアジア各国の首脳が東京に集まった。アジアの首脳が一堂に会した画期的なイベントだったらしい。

各国首脳たちの波乱の人生を追う。それぞれがみんな自国の現状と未来にギリギリの状況で真剣に真面目に悩んで苦闘していた。

南京政府首班汪兆銘、満州国総理張景恵、自由インド仮政府首班チャンドラ・ボースといった人たちの哀れな末路に日本人はもっと同情していいし、もっと知られるべきだと感じた。

インドネシアのスカルノとハッタ、フィリピン大統領ラウレル、ビルマ首相バー・モウ、タイ首相ピブンといった人物もどうしてもっと知られていないんだろう。日本軍を利用して、同時に戦後の独立を見据えて距離をとる策士で志士。一国のリーダーはこうでないといけない。

アジア各国のリーダーたちはほぼみんな英米の一流大学に留学経験があったり弁護士だったりするエリート。大東亜共栄圏という理念はすばらしいが現場の日本軍の素行の悪さを嘆く。そして日本の政治家のダメさかげんに嘆く。

東條英機という人物はほとんどの人が独裁者だと誤解しているけど、ただ真面目で有能な事務官僚軍人。昭和天皇から信頼されていた。
だが、メモ魔で全部自分でチェックしないと気が済まない性格。政治家として限界があったらしい。

ケッサクなのが各国首脳が現地の日本軍への苦情を言ってくるのに、こんなことは日本でしかないと思うのだが、「オレも辛いのでまあ我慢してくれよ」と和歌やら都都逸やらを引用して説得する。英米の一流大学で学んだエリートたちは「は?」って思うわな。
帝国陸軍内部で出世するにはそれでよかったのかもしれんが、こういった意味不明な日本人の間だけで通じることをいう政治家は戦後も日本に多い。

この本の著者は日本の統治とは比べ物にならないぐらいにイギリスとオランダの植民地支配が酷かったという。この本読むとイギリスとオランダのイメージが変わる。巻末の福田和也との対談を読むと満州国のイメージも変わる。多くのことを教えてくれた。

2 件のコメント:

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    外国人が分析すると日本の軍隊ほど兵隊が優秀で、将校以上が無能な国はないそうです。
    会社勤めしていれば日本の組織はいつの時代も同じだったのだとわかります。コネと社内営業が優秀な者ばかりが偉くなる。非常時に対応できません。外と戦争しても勝てません。
    東條英機も実は菅とか安倍レベルだと考えれば当時の日本の上層部も理解できるんじゃないでしょうか。わたしはこういう見方で、平安から戦国時代、江戸時代を見ているので、大河ドラマが情けなく見えて困ります。
    そんな人たちに引っ張られて沢山の命が失われましたが、周辺諸国に自由への機会を与えられたとしたら、それはせめてもの救いでしょうかね。

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    聞いたことある。日本は下士官以下は優秀だったけど将校は無能って。2.26事件に関する本読んでても感じたけど、偉い人たちってまるで任侠股旅でも気取ってるのか?ってぐらい発言が芝居がかってる人と、何もせず何も起こらず任期をまっとうして出世したい役人軍人しかいなかった印象。

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