先日、「Barfout!」と一緒に200円で手に入れたもう1冊がPATiPATi 2005年3月号。この年の2月23日がメジャーデビューシングル「feel my soul」のリリースの日。17歳のYUIだ。最近、YUIは可愛くなったと思っている人が多いが、それは間違いだ。YUIは最初から可愛かったのだ。
このインタビューを読んで、「おっ?!」と思ったのが、「feel~」はストリートで歌われていたものとは違う、ということだ。あたりまえかもしれないが、デビューシングルにするには既に完成していた作品にメロディーを書き足し、アレンジし詞をつけるという苦しい作業があったことが語られている。そこに注目して以下、前原雅子によるインタビューテキストを読んで見たい。
-昨年末のインディーズ・デビューに続き、今度はメジャー・デビューとなるわけですが、今、どんな気持ちです?
「まだ全然実感できなくて。インディーズ盤は発売されてからCD屋さんに見に行ったんですけど、お店に置いてあるCDを見ても実感はわかなくて。不思議な感じでした。YUIって私のことかなあって(笑)。すごいなあーと思って。だからメジャー・デビューっていうのも、今のところまったく実感ができてないです。」
-この「feel my soul」テレビ・ドラマ『不機嫌なジーン』の主題歌にもなっていますが、ドラマのほうはもう見ましたか?
「見ました。それも不思議でした(笑)。主題歌になるって聞いても、ずっと実感がなかったんですけど、ドラマを見たらもっと実感できなくなったというか(笑)。ホームページの書き込みとかでは、「ドラマによく合ってましたよ」「よかったですよ」っていう意見が寄せられてるんで、ちょっとホッとしたんですけれど。自分では大丈夫かなあって気持ちのほうが、ずっと強くて。」
-東京での生活に不安がないと言えばうそになるけれど。
「そうですね。でも作った歌をいつものように海や田んぼで歌ってると、やっぱり自分は歌うことが好きなんだって感情がわいてきて、逆に自信が出てきたり、大丈夫って思えたりして。だからこの曲を歌うと、今でもいちばんよく思い出すのが、そのころよく歌いに行ってた海や田んぼの風景で。歌ってるときに見た、すごくきれいな月を思い出したり。」
-夜、歌いに行ってたんですか?
「はい、すごい危ないことをしてて(笑)。ギターを持って、自転車に乗って、よく行ってましたね。自分でも夜は危ないかな、とは思ったんですけど、どうしても歌いたくなるときがあって。しかも次の日、朝から忙しいってわかってると、夜のうちに歌わなきやと思ったり。で、行くとだいたい2時間、3時間は歌って。」
-じやあ「feel~」もそこで歌って、ギターの弾き語りの形で完成してたものなんですね。
「はい。でも、いろんな音を入れてアレンジしたことで、見え方も全然違って。かなりパワー・アップしたというか。月を見ながら歌ってたときより、いろんな意味で育ってきたんだなって。あとこの曲、今回リリースするに当たって、新たに付け加えたメロディーも、若干あったりはします。」
-その作業は大変じやなかったですか。一度完成した曲に手を入れるのは。
「やっぱり、自分の中で定着したものがあったんで、最初は戸惑いましたね。作業していく中で、正直言うと「うん!?」って、ちょっとだけ反発を感じたりもして。でも、ちゃんと自分で納得できたから、進めたんですけど。詞を書き加えるのは、かなり難しかったです。そもそもこの詞を書いたときの気持ちも思い出して、全部ひっくるめて考え直して、付け加えたって感じだったので。なんか、そこだけ浮いてしまうようにはしたくなかったので。だけど結果的にいいものになったから、途中で投げ出さずに頑張ってよかったなって。」
-ボーカルも、そういう若干の手直しやアレンジの違いに伴って、やや変化した部分もありましたか?
「ボーカルも曲と一緒に成長したというか、歌い方とかも少しずつ変わってきたとこもありますけど。でも基本は変わってないので。歌詞に沿って感情を表現することを大事にしたい、という部分はずっと変わっていないんで。」
-そこは変わらずに、全体的に表現力がアップした、みたいな?
「そう……かもしれないです。曲も自分も育ってきてると思うんで。例えばサビの部分とかもそうですけど、前よりもっと感情を歌に込められるようになった気がするんですね。力強く歌えるようになったとこもあると思うし。なんか、意識してそう歌ったわけじゃないんですけど、結果、少しずつ変わってるっていう。」
-もしかしたら、それはYUIさん自身の変化によるものかもしれないですね。
「そうですね。私はここから前に進んでいくっていう意味では、福岡にいたころも今も変わってないんですけど、今はより決心が強くなった気がしてて。この曲を作ったころは、東京に行ってもちやんとやっていけるかなっていう不安でいっぱいだったと思っんですね。だけど今は、そういう目分を見つめ直すことができたと思うんで。それで歌詞にしても、また違う見方ができるようになったのかもしれないです。当時の自分を客観視することができたから、歌詞の言葉の重みとか、言葉に隠されたいろんな感情がわかるようになった、みたいな。」
-その意味で言うと、カップリングの「Free Bird」も「Why me」も、曲を作ったときとは違う手応えがあったり。
「ありますね。『Free~』も福岡にいるころ書いた曲で。この曲って、なんかこうボンと出てきた曲なんですよ。すごい自分になじむ曲っていうか、聴いたことがあるような懐かしい感じのする曲だったんですね。だから、誰かの曲かなって、不安になったりして(笑)。でもスムーズにあふれるように出てくるんで、コードを探しながら作っていって。で、あとでメロディーからイメージを広げて詞を書いたんですけど。」
-それはどういうイメージでした?
「すごい天気のいい海と、その青い空をパタパタ~ってすがすがしく鳥が飛んでくイメージ、かな。あと、毎日あまり思い詰めないで、余裕を持っていたいなっていう気持ちを、自由に空を飛ぶ鳥に重ねてるとこもありましたね。」
-そしてもう1曲の「Why~」ですが、これはオーディションでも歌った曲だそうですね。
「はい。これは初めて自分で作った曲で。曲の作り方とかも知らないから、感情の赴くままに音や言葉の響きを手がかりに、イメージを曲にしていって。どうやったら曲って作れるんだろって思ってたわりには、いざギターを持ってコードとか押さえてたら、結構メロディーが浮かんできて。なんかコードの響きに刺激されるのかな。ギターを弾いてるとイメージが広がって風景が見えやすくなるみたいで。わりと、そんなに苦労もせずメロディーは作れて。」
-詞はどうでした?
「言葉を乗せることのほうが難しかったです。こういう気持ちを書きたいっていうのはあっても、なかなかメロディーにハマらなくて。言葉を探すのに苦労しました。」-でも自作曲第1号なわけだから、完成したときはうれしかったでしょうね。
「特別な感じでした。で、この曲、当時通ってた音楽塾のライブで歌ったんですね。それも初めての体験で。」
-人前でちゃんと歌う、という意味で。
「そうです。そこで歌ったとき、初めて自分をさらけ出せた、と思ったんですね。自分の気持ち、みたいなものを。それで、歌でやっていくんだっていうようなことも、そこですごい確認できたというか。今思い出しても、とっても不思躊な感じでした。ステージに立った瞬間、それまでの緊張がなくなって、自分が今歌ってるっていう実感が強まっていって。どんどん気持ちよく歌えるようになって。」
-その音楽塾でのライブのときと今とでは、かなり自分が成長したと思いますか?
「思います。前よりずっと、自分の力でという気持ちが強くなったし。自分で、と思うこと、すごく増えた気がしますね。」
「feel my soul」のアレンジが最初のディレクターへの反発だったかもしれない、と今回思った。改変前を聴いている人は実際にストリートに居合わせた人たちだけだろう。
あと、夜中に歌いたいからって、アコギを持って自転車は危ないと思った。自分もギターケースを前かごに入れて、ネック側を肩に乗せて自転車移動ってしたことあるけど、あれは危ない。YUIも同じ事をしていたかと思うとさらに親近感(笑)。不良にからまれないかも心配だ。
Free Birdを初めて聴いたときは度肝を抜かれたわ。衝撃的だったわ。こんなことができる17歳って・・・。天才だと思ったし、強く嫉妬したわ~。自分が嫌になったわ~。このときから6年以上経った。昔の音楽雑誌を見ていると、「ああ、この人たちはどこへ行ったのかな・・」って思うことがたくさんある。そんなキビシイ世界の中で、よくぞYUIは今日まで第一線で活動し続けてくれた、と思う。
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