2025年8月14日木曜日

山下美月「山田くんとLv999の恋をする」(2025)

映画「山田くんとLv999の恋をする」を見る。マンガ原作があってアニメ化もされてからの実写映画。主人公山田が作間龍斗でヒロイン茜が山下美月。ふたりとも映画初主演。
監督は安川有果で脚本は川原杏奈。音楽は林イグネル小百合。制作は角川大映スタジオで配給はKADOKAWA。

これ、絶対つまらない女子中高生が見ればいいくだらないスウィーツ映画だと思ってた。完全に間違っていた。硬派で誠実で優しさにあふれた男女の、真面目で人間力の高い笑いと涙の恋愛ストーリー映画だった。参りました。もっと早く見ればよかった。
失恋したばかりで荒んだヒロインはネトゲで出会った不愛想でテンションの低い冷めた目をした山田という男に惹かれていくという話。ヒロインは女子大生だがなんと山田は高校生。
アバターたちが実際に集まって名乗り合う。それはもう「レディプレイヤー1」。

まず、主人公山田のヒロイン茜や周囲の仲間を見る目つきの独特さに驚く。恋に関心のなかった暗い男が陽気で楽しく面白く可愛らしい女性を発見した…という目。女性監督ならではの演技指導があったに違いない。

この男がとにかく真面目で大人。高校生でネトゲにどっぷり浸かっててこれほどの優しさと人間性を持っていられるとは思えない。もしこんな男がいるのなら全日本人はネトゲをやるべき。
あと、ヒロイン山下美月。この子は乃木坂時代から演技が上手だったのだが、この映画での山下美月のコメディエンヌとしての演技力と魅力には驚く。乃木坂を卒業してからさらに輝きを増したように感じる。

その笑顔の太陽のような輝き。表情のビシッとした正確さ。恋の予感に戸惑う少女の可憐さと戸惑いまでも的確。
女優を志し挫折しアイドルを経験し再び脚光を浴びるという、これまでの山下美月の美少女としての四半世紀で得た経験のすべてを発揮してた。もう美月さまと呼ぶしかない。
この手の映画は必ず中盤に「そんなの要らん」という重たいシリアス要素で停滞するとか、「そんなことが唐突に起る?」というような疑問のある展開もまったくない。そういう嫌な要素がいつか来るんじゃないかと身構えていたのだが、そんなものは一切なかった。

とにかくテンポよく飽きさせない。無駄がない。この女性監督と脚本家のセンスがとにかく良い。そして音楽もセンスが良い。青春日本映画の良作を感じさせる。

主演のふたりがとにかく良かったのだが、それ以外の脇役たちも適切だった。
誰も嫌な人の出てこないこのドラマで唯一嫌な女の子として登場した瑠奈(月島琉衣)ですらも周囲の人々の正しい優しさでちゃんとした人間になってるw あのオタサー姫オフ会がオタクのおじさんたちばかりというシーンは描き方に多少の悪意があるが、美月はああいう人たちにたぶん慣れてるw

ヒロイン茜の唯一の親友桃子は甲田まひる。自分はこの人を初めて知ったのだが、調べてみたらシンガーソングライターピアニスト?!それはすごい。最初見たときグラビアアイドルかモデルだろうと思ってた。才能のある個性的美女だった。

たけぞうさんという謎のおじさん(鈴木もぐら)のキャラも不思議で良い。高校の文化祭の射的ゲームで無双する姿はほぼ「メキシコ革命」。
あと、椿ゆかりは茅島みずき。ほぼ「推しの子」の黒川あかねの存在感。山田くんに秘めた恋慕。
茅島みずきにも感心しかしない。この子台詞と演技が始まると毎回毎回ぐいっと惹きつけられる。若手女優としてそれは強力な強み。片想いの切なさに胸が痛い。てか山田くんに恋してた学園の女子たち全員つらいw
そして、山田とゆかりの共通の友人は前田旺志郎。「海街diary」から10年経ったんだなあとしみじみ。

出演者たちみんなが適切にキャラを演じてた。脚本も演出もすばらしい。たぶん、誠実に真面目に人を愛する素晴らしさを説く原作も良いんだろうと想像。
作間くんのファンはさらに作間くんが好きになったに違いないし、山下美月のファンはさらに美月が好きになったに違いない映画。
映画予告編とポスタービジュアルはこの映画の内容と雰囲気をあまり正しく伝えていない。映画本編がすべてを上回って良いという、正しく楽しく満足度も高いスウィーツ映画。

主題歌はマカロニえんぴつ「NOW LOADING」(TOY'S FACTORY)

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