2025年8月15日金曜日

貴志祐介「クリムゾンの迷宮」(1999)

貴志祐介「クリムゾンの迷宮」(1999)を角川ホラー文庫初版で読む。こいつは昨年秋ごろにピクニックに出かけた先にあったBOで100円購入。

子どもの頃から一生懸命勉強していい大学に入って一流の証券会社に勤めてバブルを謳歌したのも束の間、ホームレスにまで転落した40男藤木。目を覚ましたら、赤と黒の縞模様の奇岩が立ち並ぶ不毛の渓谷。
傍らにはわずかな食料と水と携帯ゲーム機。「火星の迷宮へようこそ。ゲームは開始された…」

ゼロ年代は映画でもドラマでも、強制参加デスゲーム、生き残りを賭けたサバイバルゲームが流行った。この本もおそらくそんな感じ。

藤木はゲーム機の指示する方角を慎重に確かめる。ここは南半球?熱帯の暑気に体力を奪われて行く。水と食料をどうすれば…。
焚火をしてると人の気配。逃げ出したので追いかけると30歳ぐらいの女。藍と名乗る。(こいつは追いかけられ転倒したときにゲーム機を破損)
話を聴くと自分と同じ状況。前後の記憶がない。日本ではエロ漫画を描いて暮らしていたという。

ふたりで協力して第1チェックポイントへたどり着くと、そこにはすでに7人の男女。みんな日本人。

ゲーム機の指示に従って、それぞれがペアを組んで東西南北へ。それぞれにサバイバルに必要なアイテム、護身用の武器、食料、情報があるという。藤木と藍は情報のある北へ。
岩山と蠅と蟻。毒蛇にトカゲ。極限のサバイバル。

この本、中盤からアレを求めて移動したグループがアレになって…という展開以降がグロくてエグい。食料や武器、アイテム、を交渉材料に相争う。読んでいてひたすら厭。

これもゲームマスターが拉致した人々に殺し合いをさせて、暇も金も棄てる程ある金持ちたちが高みの見物で楽しもうってやつか?胸糞悪い。
特に罠にハマってしまった南へ行ったやつらの運命が残酷すぎる。たぶん、日本の富裕層、アメリカの資本家たちはこんな酷薄な感じで弱者たちを罠にはめている。

ホラー小説としてエグくて面白かった。傑作で名作かもしれない。設定が新鮮でアイデアに充ち溢れている。実際、貴志祐介作品としても人気作。
人間の醜さを描くホラー映画が好きな層にはオススメできる。

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