2025年8月18日月曜日

谷崎潤一郎「犯罪小説集」

谷崎潤一郎「犯罪小説集」(1991 集英社文庫)という一冊を手に入れたので読む。

これは山梨方面にキャンプで出かけた帰りにそこにあったBOに立ち寄ってパラパラめくってみたら読んだことないやつを集めた短篇集ぽかったので連れ帰ったもの。110円。

4本を収録。おそらくすべて大正期に書かれたもの。どれも主人公「私」の体験を語る、探偵の出てこない探偵小説風短編。

柳湯の事件
弁護士先生の元へ駆けつけてきた青年の語る話。この青年がヌラヌラしたものに惹かれる変態。混みあう銭湯で湯船の中に女の屍体を見るという幻想怪奇。
正直、読み終わったとき「……」という無の表情になっていた。

途上
近々結婚をする紳士の前に現れた紳士。自分のことを調査する探偵?
これは乱歩作品にもある「可能性の犯罪」というやつだが、こんなことで人殺し呼ばわりされたらたまらない。これも読み終わった後にとくに何も感想が思いつかない。

一高の寮で起こる盗難事件。目撃証言から「私」が疑われているらしくて…。
これは世界的に有名な某女流ミステリー作家の有名作を思わせるような展開と言えるかもだが、これもチョイ驚いた…という程度。

白昼鬼語
この本の半分以上を占める中編。友人の園村から強引に殺人の起る場面へ誘い出された私。壁の節穴から男女二人組が男を殺害した後に死体処理してる様子を目撃。そしてその後の意外な顛末。これは語り口が初期乱歩のよう。

谷崎はどれを読んでも感心することが多かったのだが、この作品集は何も感心しなかった。どれもが大正時代の素朴な犯罪独白。後のありとあらゆる犯罪小説や推理小説を読んでいる人には乱歩に劣るように映るかもしれない。
この短編は自分としてはなくてもかまわないと思った。かろうじて「柳湯の事件」は後の谷崎を知る読者には刺さるかもしれない。

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