2025年7月30日水曜日

東野圭吾「白夜行」(1999)

東野圭吾「白夜行」(1999)を2002年集英社文庫版(2008年35刷!)で読む。ついに読む。
これは2023年6月にBOで買ったものなので2年積読本。なんで買った時期が分かるかというと、レシートが挟まってたから。

なんと854ページもある。おそらく一冊の文庫としては自分史上最長最厚。厚すぎてなかなか開こうという気になれなかった。それにドラマと映画ですでに見て内容を知ってるし。

だが、3日かけて読み終わった今、余韻に浸って呆然自失としてる。長かったのだがページをめくる推進力がある。
これはもう日本戦後社会派ミステリーとして屈指の名作。読んでる最中に「砂の器」「ゼロの焦点」「飢餓海峡」「火車」といった社会派推理小説の名作が思い浮かんでた。山崎豊子だったかもしれない。これは推理小説とは言えないかもしれない。
ドラマ映画を見た人は原作も読むべき。別の感動が得られる。東野圭吾はまるで文豪。

原作は唐沢雪穂という美少女と桐原亮司という少年の関係がまるで見えずひたすら不気味。雪穂の周辺で自殺や事故死、レイプ事件など発生。周囲の人々が不幸になってる。
その背後関係や真相が一切スルーされたまま本は進んでいく。ずっと「あれはなんだったの?」と疑問マークが浮かぶ。

てか、2006年の綾瀬はるか、山田孝之、武田鉄矢によるドラマ「白夜行」はなんとなくしか記憶にないけど、原作とまるで雰囲気が違う。ドラマは原作の行間を補足説明するような内容だった。
ドラマ版はこのふたりの男女に同情的だが、原作だとふたりがかなりの悪党。悪い奴らは子どものころから性悪。

ドラマ版はなんと最後のほうに書かれた事件の真相を初回ですべて明らかにしてた。なんでそんな構成にした?
第2話から見始めて最終回ひとつ前に第1話を見てから最終回を見るようにすればいいのかもしれない。(それでもダメかもしれない)
ドラマ視聴者にとっては密室の件やアリバイの件よりも特殊な男女の関係が重要。
堀北真希、高良健吾、船越英一郎らによる2011年映画版はあまり記憶にないのだが、ドラマ版も映画版も衝撃ラストが原作に忠実だった。

ドラマにも映画にもある初老刑事による嘆きの愁嘆場は原作になかった。唐沢雪穂という悪女の徹底した冷徹ドライさが徹底。松本清張に出てくる悪女の質感。
この稀代の悪女になんら司法の鉄槌も天罰も下らずでは読者はイライラかもだがノワール小説としては適切。

この本を読んで、雪穂と亮司は東野圭吾と同世代だと知った。
70年代オイルショックから始まって80年代90年代。作者と同年代読者は登場人物と同じタイミングで日本の社会情勢を経験。一緒に時代の変化を見てきたはず。(自分は桐原父殺害の真相で飯塚事件のことも想ってた)

東野圭吾は、あの酷い時代をたくましく強かに、ふてぶてしくずる賢く生き抜いた同世代を描いていた。それは多くの読者も自分の歴史を見るかのように共感。まだ読んでいない人は読め!今の学生も読め!これは大傑作かもしれない。

自分もまだ読んでない東野圭吾がたくさんある。今後、検討じゃなくて読書を加速させる。

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