三島由紀夫「音楽」(昭和40年)を新潮文庫で読む。これ、その内容から長年避けていたのだが、日向坂の片山さんが読んでるというので慌てて自分も読み始めた。
この小説、ざっくり説明すると、嘘つきメンヘラ女が若い精神科医を振り回す話。
文庫裏面のあらすじによれば
少女期の兄との近親相姦により、美しい愛のオルガスムスを味わった麗子は、兄の肉体への憧憬を心に育み、許婚者をも、恋人をも愛することができない。麗子の強烈な自我は、彼女の不感症を癒すべく、懇切な治療を続ける精神分析医の汐見医師をさえ気まぐれに翻弄し、治療は困難を極める――。女婿の性の複雑な深淵に迫り、人間心理を鋭く衝いた、悪魔的魅力をたたえた異色作。
なんか、すごく通俗的な内容。あまり文学の香りがしない。読んでも読んでも面白くなってくれない。自分が今まで読んだ三島由紀夫でこれが一番面白くない。感心する部分もあまりない。
「鏡子の家」と並んで自分的にワースト。大衆への三島によるフロイト解説会話劇かもしれない。
三島は天才なので当時の精神分析の最前線を取材し把握してただろうけど、今の読者がフロイトとかハイデガーとか言われても、そのすべてを信用して文体に身を任せられるかどうか…。
日向坂46の片山紗希さん(18)は「電車で前の人が読んでたので」興味を持って買ったそうだが、よりによって「音楽」が最初とは。
買う前に新潮文庫裏面のあらすじを読んだはず。本人としては抜き打ちカバンの中身チェックでバラされることは不本意だったかもしれない。オタは片山さんに読後の感想を求めてはいけない。
自分ならまず十代の子には「潮騒」「夏子の冒険」「永すぎた春」「命売ります」あたりをすすめる。
つぎに「仮面の告白」「金閣寺」「愛の渇き」、そして「青の時代」「午後の曳航」「獣の戯れ」「美しい星」、さらに「真夏の死」「鍵のかかる部屋」といった短編集からにしろと言いたい。
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