内田康夫「戸隠伝説殺人事件」を読む。これも無償でいただいた本なので読む。
今作は内田康夫7作目にあたる初期作品。昭和58年7月にカドカワノベルズより刊行後、昭和60年に角川文庫化、平成4年に徳間文庫化を経て、1996年に著者校訂により「完全版」とされた角川春樹事務所より刊行。
内田康夫は今作に自信を持っていたらしい。ちなみに内田康夫は戦争末期に戸隠村に疎開していたそうだ。長野と戸隠については詳しいらしい。
これは長野県警捜査一課の竹村警部が活躍する「信濃のコロンボ」シリーズ。角川春樹事務所刊行では「伝説」シリーズの一冊。
自分、過去3回ぐらい戸隠に行ったことがあったこともあって、今作を読もうと思った。鬼無里という地名は見たことあったのだが、鬼女紅葉伝説とか、平惟茂といったトピックは知らなかった。
国鉄のディスカバージャパンが始まってから13年目という時期。
長野の財界人が戸隠毒の平で服毒死して遺棄されて発見されたという事件。地元VIPなので県警幹部たちが現場に乗り込んでくる。
そして背中に矢の刺さった男女の遺体。
そして戦争中に兵役忌避で戸隠村の巫女の家に匿われていた子爵の息子と、巫女と、世話をする夫婦、憲兵隊、夜這い男という戦中エピソードを挟んでくる。ああ、戦争中の悲劇が現代の事件に影を落としてる…という社会派刑事ドラマでミステリーロマンなやつ。(80年代は戦争中の秘密を持った老人がまだまだ社会の中心にいた時代。)
そして、長野選出の大物議員で政権与党重鎮が事件の捜査に介入し圧力をかけてくる。竹村警部を現場から外そうとする。こんなことは現実でもほんとうにあるんだろうか?
(この小説が書かれた当時、現職の国会議員が殺された事件は浅沼社会党委員長刺殺事件以来久しくなかった…と書かれている。)
そして大物議員もホテルから失踪しキャンプ場で死んでいる…。
読んでいて長く感じたのだが、これは今まで読んだ内田康夫作品のなかではマシな面白さがある。見立て殺人というジャンルだし、本格な要素もある。内田康夫をミステリーファンはあまり読んでないかもだが、やはり初期作品は野心的で面白いものもあると改めて感じた。
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