昨年11月からアマプラ限定で配信されている実写ドラマ版「推しの子」を、公開から約2か月かかってようやく完走した。1話約50分ぐらいある。全8話を完走するのもなかなかキツい。
自分は齋藤飛鳥が出てるから見たのだが、驚いたことにこのドラマは齋藤飛鳥演じるカリスマ人気レジェンドアイドル星野アイが主人公ではなかった。
双子の子(ルビーとアクア)を産み、子育ての最中、人気絶頂でいよいよ東京ドーム公演というその日に、狂ったオタに殺害されてしまうというショッキングな展開。
2年前からずっと世間の話題の中心だったアニメ「推しの子」。自分はYOASOBI「アイドル」があってからアニメを見たのだが、第1話だけ見た。
その時点では、まあ、中高生が見ればいいアニメだと思ってた。
この実写ドラマを見て、自分は間違っていたと気づいた。ネット配信ドラマはもう何年も前からテレビドラマを凌駕しているのだが、この「推しの子」はあまりにクオリティが高い。各話がほぼ映画のクオリティ。
とくに、各話ごとにそれぞれ別の主題歌とオープニング映像があったことには驚愕。なんというテマヒマのかかることを…。
それに、ドラマの内容にも驚く。アイドルの裏側、芸能界の現実と闇、そして殺人犯を探し追い求めるサスペンス巨編だとは想像してなかった。
人間ドラマが劇的で精緻で重厚。細部にまで心が通っている。劇中に架空の恋愛リアリティーショーや人気漫画のドラマ制作現場を登場させるとか、リアルなアイドルコンサートステージを作り込んでライブ収録した映像を入れてくるとか、何もかもがお金がかかってるし、そこにクリエイティブ。
結果、この実写ドラマに関わった全てのクリエイターの才能と情熱に感動。そして、出演した俳優たちの持てる才能と努力のすべてに感謝。
クールでスタイリッシュな映像編集。望みうる最高のドラマ化。
星野アイを演じた齋藤飛鳥がまず最大の成功。現在の日本において、このキャラを演じられる容姿と説得力を持った若手女優は齋藤飛鳥を置いて他にない。
齋藤飛鳥の星野アイを批判する人がいるとすれば、他に誰なら適任なのか教えてほしい。人気ナンバー1アイドルを10年に渡ってストイックに務め上げ、威風堂々颯爽と人気絶頂でアイドルを卒業し、俳優としてキャリアを積み、ミステリアスな雰囲気を保っているアイドル女優は齋藤飛鳥をおいて他にない。
クールな目つきをしたアクアを演じた櫻井海音。実質このドラマの主役。星野アイを殺した真犯人を探し求めるために芸能界で調査を続ける復讐の修羅。主演として強いインパクトを残した。
実はこのキャラは、星野アイのファンで出産を担当した産婦人科医・雨宮吾郎(成田凌)が、星野アイの息子として転生した姿でもある。幼少時から中身は大人。医者が子どもを演じてるわけだから頭脳明晰。
その点でこのドラマはファンタジー。だがそれ以外の全てにおいて、このドラマは大人の鑑賞に耐えるリアリティーを持っている。むしろ大人が見るべき人間ドラマになっている。
そして、ドラマで一番の注目女優は元天才子役女優・有馬かなを演じた原菜乃華。今作で評価も知名度も上昇。
この原菜乃華がそもそも子役時代から名の知れた天才。日本のマンガアニメドラマの役者に求められるデフォルメ演技を的確にこなせるスキルを持っている。この息苦しいドラマの中でコミカルな笑い要素も担当。ネクスト広瀬すずだしネクスト浜辺美波になれる逸材。
今の若手役者たちはもれなくみんな演技が上手。みんな悠々と困難な役を乗り越える。
ルビーが有馬をアイドルに勧誘するシーンが面白い。恋心を抱くアクアからも直々にお願いされ心がときめくシーンは視聴者もときめく。
ここのシーン、アニメ版も確認するために見たのだが、アニメよりも実写ドラマ版のほうが画的にクオリティ高いし情報量が多い。
このドラマ、自分はアニメ版よりもかなりレベルが高いし超越してると思ってる。
そしてアクアの双子の妹ルビーを演じた齊藤なぎさ。
B小町のメンバー。元アイドルがアイドルを演じるのだから、これ以上の適任はいない。
物語終盤は兄アクアに代わって復讐の修羅となる。実はこの子も吾郎医師の難病児童患者だった子が転生。なので前世の記憶を持っている。
動画サイトにある櫻井海音と齊藤なぎさのドラマ宣伝動画などを見ると、アクアとルビーとまるで雰囲気が違う。役者ってほんとにすげえなって思う。
黒川あかねを演じたのは茅島みずき。恋愛リアリティーショーでアクアと知り合い、SNS誹謗中傷でボロボロになって死のうとしてるところをアクアに助けられ、アクアと交際。
この女が異常に鋭い。まるでFBI捜査官。アクアとルビーと星野アイの秘密にかなり接近してしまう。かなりの重要な役どころ。
あかねと有馬かなのアクアをめぐってバチバチしたやりとりも、このシリアスドラマにおける清涼剤のような笑い。
アクアがかなと公園キャッチボールのシーン。アクアが重大な秘密のヒントを出してるのだが「あんた厨二病?」と答えるのは、ビンカンあかねとのコントラスト強い対比。
MEMちょ(あのちゃん)はB小町メンバーであるのだが物語上は脇役。だが、このドラマは脇役であってもみんな見せ場がある。キャラとしては「タッチ」の原田ポジション。
B小町マネージャー社長の倉科カナ、元社長の吉田鋼太郎、五反田を演じた金子ノブアキ、プロデューサー鏑木の要潤、上手い安い早いの尾美としのり監督、みんな適役。
このドラマで唯一嫌だなと感じたキャラが「東京ブレイド」の原作者漫画家の志田未来。ドラマ制作の現場で脚本が嫌だと、同一性保持権を盾に収録直前に原作を取り下げるようヒステリックに求めて現場を混乱させる。
これも日テレと小学館であった悲劇的な事件を思わせるエピソードだが、多くの修羅場をくぐりぬけて来た雷田プロデューサー(中村蒼)の有能ネゴシエーターぶりで脚本家GOA(戸塚純貴)と原作者の連携を取り持つ。このシーンはよかった。
こういうドラマ制作の舞台裏シーンすらもリアリティ。原作者はどこでこういうのを見てきた?
あと、中年男性が有馬かなを自宅を仕事場と称して連れ込み性加害しようとするシーン。いろいろと日本の芸能界の闇にタイムリーに迫る。
ワンシーンだけキャバ嬢役で菊池姫奈が出てきてびっくり。有馬をスキャンダルにはめて写真を売る性悪。
とにかく何もかもが予想以上。ぜひ続きは劇場で…と思ったのだが、ドラマ編でぐずぐずしてる間に劇場が狭まってた。いずれアマプラで配信されるのを待つしかない。
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