アンソニー・ホロヴィッツ「絹の家」(2011)を駒月雅子訳(2013)の角川文庫(2015)で読む。これは今年の夏に長野へ行ったときにそこにあったBOで110円購入本。
THE HOUSE OF SILK by Anthony Horowitz 2011
これはホロヴィッツ氏によるシャーロック・ホームズ長編。ホームズが亡くなって1年後、ワトソンはホームズの想い出に浸りながら、まだ公表していなかったホームズが関わった「ハンチング帽の男と絹の家」事件を原稿にまとめ、チャリングクロスのコックス銀行の金庫に保管する。100年後に開封公開する指示と一緒に。
1890年の11月末、ベーカー街のホームズの部屋をウィンブルドンの美術商カーステアーズ氏が訪れる。「不審な男につきまとわれている」
以前にボストンの美術コレクターにコンスタブルの絵画4点を販売したのだが、運ぶ途中で列車強盗の被害に遭い、信頼する部下は銃撃殺害され絵画も爆破され粉々。
殺害された部下のためにも復讐したい。カーステアーズは美術コレクターと一緒に探偵を雇う。この探偵は仲間と犯人オドナヒュー(アイルランド系の双子兄弟)を襲撃。銃撃戦で双方に死傷者を出しながらも賊一味の組織を壊滅。だが、オドナヒュー兄弟の弟キーランは逃走し行方不明。
カーステアーズ氏によれば、このキーランがロンドンにやってきて自分に復讐しようとしているのではないか?
カーステアーズ邸リッジウェイ・ホールに泥棒が侵入したのを契機に、ホームズは浮浪児たちによる情報収集グループ・イレギュラーズを放つ。族は盗んだ宝石を質屋に持ち込むに違いない。
はたして目星の人相の悪いアメリカ人を突き止める。だが、当のアメリカ人は安ホテルの一室で殺害。そして、その場を見張っていたロスという浮浪児が何かを隠している…。
このロス少年が犯人を強請ろうとして、逆に何者から暴行(拷問?)を受け殺害。
そして、少年の姉サリーが働いているパブを突き止め行ってみると、サリーが急にワトソンを刺す。そのときに「ハウス・オブ・シルク」という謎の言葉を残す。
ホームズは兄マイクロフトを頼るのだが、「ハウス・オブ・シルク」について「これ以上調査するな」とくぎを刺される。
すると大胆にもホームズは新聞広告を出す。すると獲物がかかる。事務所を訪れた男の指定する場所のアヘン窟に行くと、そこでホームズは敵の罠に落ちる。持参したリボルバーでサリーを銃撃殺害したことになって逮捕。ハリマンという警部がホームズが犯人と決めつけ。絶体絶命のピンチ。
ワトソンはホームズを救出しようとするのだが、レストレイド警部以外のスコットランドヤードの関係者はホームズに冷たい。
あとはワトソンの孤軍奮闘。何者かに拉致されホームズを脱獄させるための鍵を渡される。ホームズが拘留されている監獄へ行くと、ホームズは忽然と姿を消していた…。
従来のホームズ譚になかったどす黒い巨大組織の陰謀サスペンス。これはコナン・ドイルには書けなかったスケールの大作。これは傑作といっていい。ホームズ第5の長編と呼んでいい仕事。アンソニー・ホロヴィッツのホームズ愛と見識と作家としての力量はさすがとしかいいようがない。
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