これも無償で頂いて来た古い文庫本。
日本人の多くは「ドラえもん」「時をかける少女」でタイムトラベルを学んだ。誰もがタイムマシンという言葉は知っていても、このH.G.ウェルズの原作を読んだことがある人は少ないのではないか。
なにせ1894年にナショナル・オブザーバー紙に連載されたものが最初という古い小説。
1894年って日本で言ったら明治27年。甲午農民戦争から日清戦争が始まった年。正岡子規も夏目漱石も17歳。
この「タイムマシン」という小説が想像してたのと全然違ってたw
真鍮と黒檀と象牙と石英でできたずんぐりと不格好な形をしたレバーのついた形状らしいのだが、動力源や機構、論理的裏付けについては一切触れられていない。
主人公の科学者は「タイムトラベラー」と呼ばれている。名前は書かれていない。
こいつがいきなり80万2701年後の未来へ移動してしまうw それは危険すぎる。
どうやらそこにテムズ川がある。すでに英語は通じない。そこにいる未来人は5歳児のような知能の小人。体格も体力も退化。
白い衣服を着て果物のようなものを食べている。働いている様子もない。生産的なこともしていない。ただ遊んでいる。文明も退化。
ああ、この小説はディストピア未来小説だったのか。
人類は病気や社会問題を克服し平和な社会を実現したら、そこから退化していった。もう何も考える必要もなかった。
有産階級は地上人エロイへ、労働階級はおぞましい姿の地底人モーロックへと別れていた。モーロックはエロイを捕食してる?!
主人公は溺れかけてたウィーナという少女を助ける。この子と一緒に行動するのだが意思疎通がギリギリ。元の世界に帰るため、失われたタイムマシンを探す。
タイムマシンを作ってしまう人がマッチをすって火をつけてモーロックと戦ったりするw
命からがら現代の部屋へと戻ってくる。記者と友人たちに体験してきたことを話して聴かせるのだが…、ちょっと待て。それってタイムトラベルしてきた証拠なにもないよね?異世界とかかもしれないし、夢を見ていたのかもしれない。しかし、手元には未来から持ってきた花。
主人公はさらに3000万年先の世界も見てきてた。アーサー・C・クラーク先生もそんな先のことは考えていない。もはや人類は存在してないだろう。地球の環境も今とはまるで違うだろう。
だがしかし、正直言って面白かった。まったく想像を超えていた。ちょっとは知ってる話なのかな?と思ってたけど、まるで知らない初めて読む話だった。
終わり方も味わいと余韻がある。これは誰でも一度は読むべき。
そして以下短編
盗まれた細菌
コレラ試験管持ち逃げ騒動。19世紀から細菌テロという概念があったことが驚き。
深海潜航
水圧耐性試験もなく、そんな簡単な潜水艇(鉄球)で深海に挑むとはなんと危険な…。19世紀人ならではの楽観的なチャレンジ。そして海底人との遭遇。
新神経促進剤
数百倍精力的に動ける薬、それは他人よりも1000倍速く動ける薬だった!そんな薬を簡単に他人に与えるな。オリンピックで西洋人が簡単にドーピングに手を出すのはこういうことか。
みにくい原始人
19世紀人の想像する人類とネアンデルタール人の戦い。
奇跡を起こせた男−散文による四行詩−
何でも想いの通りになる超能力者?!え、夢オチなのこれ。
くぐり戸
夢見がち空想青年が人世でたびたび目撃する「くぐり戸」についての幻想短編。
どの短編も味わいがあって面白い。
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