金大中事件(1973)を題材にした2002年公開の日韓合作映画「KT」を見る。原作は中薗英助「拉致-知られざる金大中事件」(新潮文庫)。
監督は阪本順治で脚本は荒井晴彦。音楽は布袋寅泰。日本での配給はシネカノン。
昨年は金大中事件から50年だった。お勉強のために見ようと思ってた。
金大中という名前は、たぶん50代以上の人は、かつて毎日のように海外ニュースで耳にしていた名前。朴正熙、全斗煥といった軍人大統領独裁政権時代の韓国の野党リーダーで民主活動家の大統領候補。
そんな人物が韓国中央情報部(KCIA)によって東京千代田区のホテルグランドパレスから拉致され殺されそうになるのだが、アメリカが介入し、5日後にソウルの自宅で発見されたという事件。
完全に日本の国家主権を侵害する事件。韓国は昔から日本をナメていた。自民党の政治家たちも外務省も、声と態度がデカい韓国には及び腰だった。
そんな日本と韓国の関係悪化要因になった事件を描いた映画が2002年日韓ワールドカップ前に公開された。
話題になりそうな映画だったのに、硬派すぎてあまり見られてない。今日に至って忘れられた映画になりつつある。
三島由紀夫が市谷で自決した日、自衛官の富田(佐藤浩市)はその部屋に鼻を手向ける。こいつが記者原田芳雄をいきなり殴りつけるなど粗暴。
その一方で韓国は軍事独裁政権への民衆の反発。大統領選挙での不正を糾弾する金大中(あまり似てない)の記録映像を見る朴正熙。
牛乳配達してる韓国女がいきなり坂道で自転車で転ぶ。佐藤が助けるのだが、この男は韓国語が話せるのか。
部屋にもどると同僚佐竹(香川照之)が向かいのアパートの一室を監視。さっきの牛乳女が韓国語の家庭教師をしている。そこに黒いスーツ姿の怖い顔した男たちが急襲。こいつらがKCIA?!
日本で韓国人が韓国人に対して暴力と脅迫、拉致がまかり通ってた。その場に現れて牽制する富田。女(かつてデモに参加しKCIAから拷問を受けた過去)だけは戻してやるというギリギリ交渉。佐渡では北の密航船と工作員をKCIAが取り締まる。日本を舞台に北と韓国の戦争。
この映画を見ると、駐日韓国大使館はスパイ組織であることがわかる。亡命した野党指導者を拉致し海岸から密航船で連れ出すとか、日本はKCIAも好き勝手できるスパイ天国。
KCIAたちが工作資金持って日本のヤクザを訪問し暗殺を依頼する。こういうときは白竜さん登場だ。「日本の警察をナメるな」「でも、目をつぶすぐらいなら若いもんにやらせることはできる」日本と韓国の闇。
筒井道隆が在日韓国人青年役。映画館でヤクザ映画を見た後、日本人カノジョを連れていることで日本のチンピラともめる。
たぶんこいつも日韓の闇に巻き込まれて行く役回り。背が高くケンカが強いので金大中側からボディガードにスカウト。えっ、弾除けの壁?
柄本明が登場。この人は別班。ここで富田が防衛大学1期生で別班であったことが明かされる。富田は「日陰者であることが嫌になった」と退官を決意。この映画、自衛官の中途半端さも問題にしてる。
平田満、木下ほうかが金大中側近として登場。木下はゼロ年代の初めから映画俳優だったのか。
金大中をKCIAから守るにはどうすればいいか?「ジャッカルの日」について金くん筒井に教える場面がある。金大中は東京都内のホテルを転々としてる。KCIA金車雲(キム・ガプス)と富田たちは協力して金大中(チェ・イルファ)の居場所を捜す。
富田は金大中単独会見スクープ記事を書いた原田芳雄記者に接触。金大中の居場所の探りを入れるのだが「知らない」ととぼけられる。しかし尾行して潜伏ホテルを突き止め金車雲に報告。
しかし、金大中暗殺計画は原田記者によって週刊誌に書かれてしまう。一度は断念。
金車雲もKCIA工作員たちも失敗すると自分たちの命が危ない。なので粗暴になる。
記者と接触していた裏切り者は粛清。遺体はバラバラに。それが独裁国家。そのシーンの中に利重剛さんがいる。光石研さんもいる。KCIAも追い詰められている。
ああ、これが金大中事件に至るまでの前段か。長い長い暗い地味なシーンの連続だった。
富田のリサーチ会社は粗暴なKCIAに利用された。日本の公安も外事課も最低。利用されただけの駒になった者たちが憐れ。
金大中事件当時は田中内閣。内閣官房長官は二階堂進か。
この映画はすごくリアルな70年代の風景であふれてる。
70年代初めの日本の安アパートとかとてもリアル。金くんの実家の散髪屋がすごく70年代ぽい。マンションも貧乏家屋も、ホテルも車も、テレビも炊飯器も、人々の服装も髪型も顔つきも、じめっとした湿度感も。フィルムで撮ってるからかもしれない。
十分に見る価値はあった。
K-POPアイドルに夢中なキッズたちもたまにはこういう映画で韓国ついて知るべき。
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