2023年12月1日金曜日

綾瀬はるか「はい、泳げません」(2022)

2022年6月10日公開の映画「はい、泳げません」を、公開から1年半経った今やっと見る。
原作は髙橋秀実の同名エッセイ(2005)。監督・脚本は渡辺謙作。主演は長谷川博己。音楽は渡邊琢磨。制作はリトルモア、配給は東京テアトル。

小鳥遊(長谷川博己)は大学(心理学)で教鞭をとる理屈っぽい人物。
7歳以来の水への恐怖心を持っている。それをオープンカフェで関西弁女(妻?)に語りかけてる。麻生久美子さんを久しぶりに見たけど、おばさんになったなあ。

この映画の登場人物たちがみんな初登場シーンから半笑い。なぜだ?なぜ大学の掲示板に初心者むけ水泳教室のチラシが貼ってある?

40代の有閑マダムたち(やたら笑う。ギリシャ古典劇におけるコロスのような存在)に混ざって入門コースに参加。男女いっしょなの?顔を水につけることすらできない男に女たちがつきあってる。
この生徒たちのアホ会話が見ていて聴いていてキツイものがある。

薄原静香(綾瀬はるか)の競泳水着は素敵。体型がリアルにスイミングスクールのコーチに見える。
その一方で40男の長谷川博己が色白だなと。(泳げるようになるにつれてたくましくなってる。)
この女コーチが主人公が水に対して恐怖を抱いていることをすぐに見抜く。正しいコーチング知識(ときに叱責)で憐れな水恐怖男を優しく導く。この綾瀬の質感が海街diaryのシャチねえに近い。

人間は誰しも生まれる前は羊水の中にいた…。その説明は心理学と哲学の先生を説得するのに十分な説得力。
だが、そんなブレイクスルーがあまり視聴者に伝わってこない。
てか、この主人公の語り口はなめらかで饒舌なのに、視聴者に伝わってくるものはあまりない。薄っぺらい。

ずっと見ていて、この映画のセンスが中高年向けだと感じた。この笑いのセンスは若者には刺さらないのではないか。
プールでは逞しい綾瀬はるかが地上では挙動不審女になっているキャラ設定はいいなと感じた。ただし、そうなった理由が交通事故のトラウマとか、やっぱり取ってつけたような理由。本人の口から説明するだけ。

中盤になってやっとこの男にはかつて息子(妻麻生久美子との子)を水難事故で失った過去があったことを示してくる。それは映画化のために盛った要素?ここだけすごくダーク。息子が死んだのに涙を流せない主人公にヒステリックに怒鳴る麻生がいちばん怖い。

そういうのたぶん要らない。時系列を入れ替えてヘビーな人間ドラマにするの要らない。
コメディ映画だと思って観た視聴者は困惑しかない。
そもそもエッセイを商業長編映画にするのはとても難しい。正直つまらない。
虚構と現実の映像表現シーンってすごくムダに感じる。そんなことに金をかけるな。
主題歌はLittle Glee Monster「magic!」「生きなくちゃ」(Sony Music Labels Inc.)。

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