2023年12月16日土曜日

スティーヴン・スピルバーグ「ミュンヘン」(2005)

スティーヴン・スピルバーグ監督のサスペンス・スパイ映画「ミュンヘン Munich」(2005 ユニバーサル)を今になってやっと見る。

トニー・クシュナーとエリック・ロスが脚本。音楽はジョン・ウィリアムズ。
2006年にアスミックエース配給で日本でもPG-12公開。当時、大きな話題になったことはなんとなく覚えている。
たぶん流れとしては事実だが細部は創作の娯楽要素も盛った映画。イスラエルとパレスチナがこんな酷い状況になってる今これを見るべきかはわからないが。

ジョージ・ジョナ「標的(ターゲット)は11人 モサド暗殺チームの記録」を原作ととしている。(新潮文庫版をこれまで何度も手に取りかけたが未読。ハヤカワ文庫にも「黒い九月事件」を扱ったものがある。)

オリンピックの歴史上、最大の汚点が1972年ミュンヘン・オリンピックでのテロ事件。イスラエル選手たちが襲撃され、人質に取られ、11名殺害された。
だが、自分がいちばん驚いた事実は、イスラエル諜報機関(モサド)が、後に報復として「黒い九月」の実行犯と幹部全員を殺害したことだった。ひょえぇぇ……。
そんな映画なので、長年見るのをためらってた。

事実に基づいた一部創作の物語。え、オリンピック選手村への侵入ってそんな感じだったの?イスラエル選手たちはいちおう兵役の訓練は受けていただろうけど、オリンピックに来てこんな恐怖体験をするなんて、それは最悪な体験。(それらのシーンは映画のところどころに挟まれる)
たぶんハマスのイスラエル入植地侵入もこんな感じだった。パレスチナゲリラ側の取る手段は、武器を持たない一般市民を襲撃し恐怖を与えること。

アヴナー(エリック・バナ)は将軍に呼び出され秘密の特殊任務を与えられる。旅客機の警護任務かと思ってたのに報復暗殺作戦。ユダヤ婆さんゴルダ・メイア首相ら閣議で決定。日本政府も無辜の市民が犠牲になったときこれぐらいしてくれるんだろうか。

モサドを退職。契約書のない契約。そして始まる報復。殺害実行犯「黒い九月」を1人ずつ殺せ。これは日本人も好きな仇討必殺仕事人。
暗殺グループにどこかで見たことがある人がいる。ああ、ダニエル・クレイグさん(この人はまったくユダヤ人に見えない)も出てたのね。

ローマで最初のターゲットを殺害。わりとアバウトでラフな実行に見えるのだが。
そしてパリ。次のターゲットもアパートメントでインタビューしたときに電話に爆弾を仕込むのだが、幼い娘が巻き添えになるのを間一髪で回避。(暗殺作戦は他人を巻き込む心配が常に存在)
ターゲットに怪我は負わせたが殺害に失敗(後に入院先で死亡)。

ときに爆弾の威力が強すぎて一般人も巻き込む。自分も怪我。フランス人協力者ルイ(こいつのパパが正体不明の大物?)が爆弾を強いものにすり替えこちらも消そうとしてきた?!これが国際的な諜報と謀略の世界。
ベイルートでの幹部暗殺特別作戦がほぼ市街戦。なんと粗暴な。

その件でルイが静かに怒ってる。アヴナーはパパの元へ連れていかれ警告を受ける。パパ役の俳優は「薔薇の名前」に修道院長役で出てたマイケル・ロンズデールだ。
ターゲットのアリ・ハッサン・サラメの情報はアンタッチャブルすぎてつかめない。

ルイがアテネに用意してくれた隠れ家に世界中の工作員。イスラエル工作員であることを韜晦するアヴナーと、アンマンのアリの口論を聞けば、今日まで続くイスラエルとパレスチナの問題がわかる。「祖国こそすべて」

映画なのでハラハラドキドキ要素も盛る。物事は計画通りにいかない。30年後に映画として見てる側ですらドキドキ。ミュンヘンの報復と関係ない人物も巻き込む。
ロシア人(KGB?)も殺害してしまう。ギリシャ人のホテルのオヤジもイスラエル人から大迷惑の激怒。
イスラエルとパレスチナが欧州で一般人巻き込んで戦争してる状態。ほぼヤクザ映画の広島、福岡。
首謀者サラメらしき人物を雨の路上で殺害しようとしたら、男たちが馴れ馴れしく話しかけて立ちはだかって防いでくる。こいつらはもしかしてCIA?!

ホテルで仲間のカールが頭撃ち抜かれて死んでる。カールを殺したオランダ女もすぐに探し出して殺害。工作員は非情。
普通の人のような身なりで銃を持った暗殺者がそこらへんにいるとか怖い。
今度は仲間のハンスも殺される。爆弾職人ロバートも謀殺?アヴナー精神ギリギリ。

もう孫の代に突入。イスラエルとパレスチナ双方には21世紀が終わるころになっても平穏は訪れないだろうというつらい映画。
てか、オリンピックを楽しみにしてたミュンヘン市民が一番の被害者。来年はパリ五輪があるが、イスラエル選手を参加させるのは怖い。あと、サッカー日本代表を北朝鮮アウェー戦に送るのも怖い。

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