2022年5月9日月曜日

芥川龍之介「蜘蛛の糸・杜子春・トロッコ」

芥川龍之介「蜘蛛の糸・杜子春・トロッコ」他十七篇(岩波文庫)を読む。まだ読んだことのなかった短編をやっつけるために読む。

(大正5年)
日光足尾への修学旅行のために上野停車場に集まった府立三中(現両国高校)の男子生徒たちの一場面。この短編は過去何度も出会ってるのだが、今回は学生服姿にスベスベ肌した顔の芥川がハッキリイメージできた。

酒虫(大正5年)
中国の故事らしい。ラストに3つの解釈を示すあたりがまるで国語教材のよう。これは読んだ記憶があったので調べてみたら7年前に読んだ「酒蟲」と同じだった。

西郷隆盛(大正6年)
大学の先輩(史学専攻)が汽車の中で老紳士から聴いた「西郷隆盛はまだ生きている」という話。芥川の書く文章はとにかくわかりやすくて適切で感心。

首が落ちた話(大正6年)
日清戦争の戦い。突然現れた日本騎兵に頸を斬られ馬にしがみついて敗走する清国兵士の走馬灯と後日談。

蜘蛛の糸(大正7年)
わずか5ページながら芥川の代表作。これを経団連の連中に読ませたい。農民たちに富を渡そうとしない中国上海の富裕層たちに読ませたい。

犬と笛(大正7年)
日本神話っぽい話。葛城山のふもとで暮らしてた髪長彦は笛が上手。笛の音に楽しませてもらった俺に巨人たちから3匹の犬をもらう。生駒山の食蜃人と笠置山の土蜘蛛から、囚われのお姫様を奪い返す話。

妖婆(大正8年)
なにこれ?怪奇講談ばなし?結婚を考えていた女中お敏が出て行ったきり戻らない。心配した若旦那が、本所の神下ろしの婆(加持祈祷、飯縄使い)からお敏を取り戻そうとする話。若旦那、その友だち、美少女、妖婆の組み合わせがブラム・ストーカー「吸血鬼ドラキュラ」ぽくもある。

魔術(大正8年)
インド人魔術師とのエピソード。童話っぽい。

老いたる素戔嗚(大正9年)
これは中学生のころ読んだことあって覚えてた。国を息子に譲って無人島で娘と隠遁生活を送る素戔嗚。島にやってきて娘須世理姫と恋仲になる葦原醜男を何度も殺そうとする話。酷い。

杜子春(大正9年)
お金を使い果たし洛陽で途方に暮れてる杜子春の前に現れた仙人は峨眉山の鉄冠子。
金ばかりの社会から離れてつつましく人間らしく暮らすことの尊さを説く芥川。

アグニの神(大正9年)
人相の悪いインド人の婆がやってる占いの家。「日米開戦はいつか?」とアメリカ人商人が占ってもらいにやって来る。次に行方不明の日本領事の令嬢妙子を探してる遠藤がやってくる。妙子はアグニの神が下りる支那人として匿われていた。遠藤は妙子を取り戻す策略をめぐらす。「妖婆」と似たような雰囲気。

トロッコ(大正11年)
初めて読んだ。わずか8ページの短編だが、子どもの不安な心情をこれほど的確に描いた芥川に感心。

仙人(大正11年)
仙人の術を教えると称して愚かな男を20年間タダ働きさせる狐のような顔した医者の妻。酷い話なのだが…ラストが予想と逆。なんだこりゃ。

三つの宝(大正10年)
短い戯曲。王子、泥棒、宿屋の主人と客、王女、黒ん坊の王。これもまるでマンガのような童話。

(大正12年)
文明開化。雛人形をアメリカ人に売らなくてはならなくなった家族の風景。

猿蟹合戦(大正12年)
猿蟹合戦の現代日本的解釈。社会風刺。

(大正12年)
黒くなってしまった白い犬が日本をさ迷い歩く。

桃太郎(大正13年)
クレイジーな侵略者桃太郎。アジアを侵略する日本軍を思わせる。

女仙(昭和2年)
わずか2ページ。どうってことのないオチ。

孔雀
わずか9行。異本イソップ物語。芥川には日本はバカばかりに見えていた。

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