ヘミングウェイの代表作として名前は知っていたのだが、短篇だとは知らなかった。まず有名な「キリマンジャロの雪」から読んで、あとはひらいたページから読んでいく。
キリマンジャロの雪(1936)
雪に覆われたキリマンジャロに1頭の豹の屍。これはライトモティーフ。夫婦がトラックの故障で数日前からその場に足止めされている。作家の夫ハリーは脚の怪我が壊疽して瀕死。もう痛みも感じない段階。夫と妻ヘレンの会話だが、夫はあまり夫人を愛してない?!
木の上にはハゲタカ。陸上にはハイエナ。作家はパリを回想。頭の中にある構想。小説の中に小説。
そして、友人の飛行機が来てハリーを乗せて飛び立つ。1人しか乗せられないので妻はその場に留まる。そして夜、テントの中の妻。
これは予想外の幻想的なラストだった。ヘミングウェイの愛と死。よく考えながら読まないと状況がよくわからない。読後の余韻がある。
フランシス・マコンバーの短い幸福な生涯(1936)
この角川文庫版の表紙イラストはこの短編のイメージだと思われる。男は莫大な富を持つがゆえに、妻はあまりの美貌のために別れられないマコンバー夫婦のアフリカ狩猟旅行。たぶん現代人が読めばレジャースポーツとして野生の動物を銃で撃ち殺すことに嫌悪感しか感じない。だが、ヘミングウェイはそんなことに愉しみと興奮を感じる人。
この夫妻と、プロハンターガイドの3人の心理。ライオン狩で慌てて無様をさらして軽蔑されたフランシス。そんな夫よりも頼もしいウィルソン。そして、衝撃の事態が!?タイトルがなかなか皮肉が利いている。
北の方ミシガン州にて(1922)
器量の良い娘とスーパーマリオみたいな鍛冶屋の性愛。
たいへん短い話(1924)
わずか4ページ。イタリアの傷病兵と看護婦。
エリオット夫妻(1924)
わずか6ページ。子作り夫婦。南部の女は船に弱い?
二つの心臓を持つ大川(1925)
ソロキャン男が鱒を釣ってさばく。
事の終り(1925)
かつて製材でにぎわったホートンズベイで釣りをするカップルの別れ話。
殺し屋(1927)
食堂にやって来た殺し屋二人とボーイと料理長、そして狙われた男の会話。
異国にて(1927)
イタリア軍病院で出会った傷病兵。
白い象のような丘(1927)
停車場での男女の酒を飲みながらの会話。
アルプスの牧歌(1927)
スキー客の見た村の葬送。妻を亡くした農夫の話。
清潔な明るい場所(1933)
深夜のCaféでボーイ二人の会話。あそこの席の老人がなかなか帰らない。
世の光(1933)
カラダのデカい娼婦が語る男の想い出。
「キリマンジャロ」と「マコンバー」をのぞく11本はどれも短くて映像作品にしたとしても5分ほどになるかと。個人的に「清潔な明るい場所」の年長のボーイさんが印象的。
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