1988年出版という古本。カバー絵と挿絵は若菜等。図書館リサイクル無償配布本としてそこにあったのでもらってきた3冊のうちの一冊。
2億フランの遺産相続をめぐる連続毒殺事件。親の遺産を引き継いだコスモ氏が遺言状を書いた後に不明の毒を注射され死亡。
パリ警察の若手うできき刑事が奇怪な歯型のついた板チョコを持ち帰り、「Fau」というメモを書いてから苦しみだし絶命。やはり同じ毒?
遺産相続の権利がある母エルムリーヌの妹エリザベートの息子フォーヴィユ老人とその息子も「殺される」と恐れていたのだが自宅で毒殺。その息子(前妻との子)も毒殺。若いマリアンヌ夫人が事件当日怪しい行動をしてアリバイがなく、現場に落ちていたリンゴの歯形が一致し、遺産目当ての殺害容疑で逮捕。
姉妹のいとこの息子ガストン・ソーブランも共犯者に浮上。逮捕直前に逃走。
「黄金三角」と同じようにルパンはスペイン貴族ドン・ルイス・プレンナとして登場。この人も遺産相続権があるということで容疑者としてマークされる。
プレンナ(ルパン)はルーマニアの伯爵の家だった屋敷に住んでいるのだが、屋敷つきの女秘書ルバスールの行動が不審だ。プレンナの行動を監視してる?部屋に閉じ込める?
ルパンは仲間のマズルー警部と謎の手紙の宛先だった村へ向かう。古城で夫婦の白骨死体を発見。そしてそこにガストン。その傍らにルバスール。
容疑者の本命が相続権ある者たちの間で行ったり来たり。だが関係者の毒殺や自殺でついに相続人候補者がプレンナだけとなって逮捕される。だが、ルパン(プレンナ)はフランス首相と知り合い。特別な計らいで釈放してもらって真犯人と、囚われのルバスールを追う。飛行機で上空から車を追う。
この本、巻頭に登場人物表があるのだが、そこにもう殺人魔として名前が書いてあるのはいただけない。読む前に表を見て犯人の名前を知ってはいけない。最後で「オマエ誰?」と驚けなくなってしまう。
あと、ルパンが叢に隠れた古井戸に転落するシーンがあるのだが、挿絵だと石積みの枠が80cmほどもある。これでは落とし穴にならないのではないか?
「怪盗ルパン」シリーズをとりあえず2冊読んだのだが、ルパンはなんら怪盗でもコソ泥でもない。祖国フランスを愛する快男児紳士。
そして、江戸川乱歩の怪人がでてくるジュブナイル作品は「怪盗ルパン」の影響を受けているように感じた。
あと、フランス軍に従軍したルパンがモロッコの土民軍の叛乱をひとりで制圧して「ルパン王国」を名乗り、勝手にフランス共和国に編入するというのは今日の読者は疑問に思うかもしれない。植民地主義を批判する韓国人は読むと頭に血が上るかもしれない。
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