引続きもらい受けて来た3冊の最期の1冊、モーリス・ルブランの怪盗ルパンシリーズ「三十棺桶島」(1919)を南洋一郎訳ポプラ文庫(1988)で読む。表紙と挿絵は若菜等。
怪盗ルパンにこんなタイトルの本があることを、この実物を見るまでまったく知らなかった。「黄金三角」と「虎の牙」の間にある長編作品。この作品でもルパンはスペイン貴族ドン・ルイス・ペレンナとして登場。
L'ILE AUX TRENTE CERCUEILS by Maurice LEBLANC 1919
ヒロインのベロニク・デルジュモンはブザンソンでブティックを経営しているのだが、たまたま見た映画「ブルターニュ地方の伝説」という映画に出てくる一場面で、自分が少女時代に使用していたV’dH組文字サインが書かれた小屋が一瞬出てきて驚く。
探偵を雇って調べさせ、問題の小屋があるブルターニュ地方のビスケー湾に面した村へ行くベロニク。小屋には確かに自分のサイン。そこで手首のない老人の死体を発見。何やら不気味な絵(ベロニクら4人の女が磔されてる)と文字の書かれた紙も発見。慌てて村の警官を連れて戻ると死体はどこかへ消えていた。
謎の文字メッセージを読み解き浜辺へ導かれるように出ると、がっしりした体つきの40女が自分の知ってる子守歌を唄ってる!?このオノリーヌという女はベロニクが誰であるかを知っていた。
ベロニクはかつて偽ポーランド貴族ボルスキー(色魔)にコロッと騙され恋に落ちそして駆け落ち結婚。だが夫からの虐待が始まり結婚は破綻し逃亡。
ドルメン(巨石)研究で有名な考古学者であるデルジュモン博士(結婚に反対)はちょっと頭がおかしくなって、ベロニクの幼い息子を連れてヨットでイタリアに渡ろうとして嵐で沈没。博士と息子は死んだと思われていた。
オノリーヌによれば父と息子は過去を悔やんで「三十棺桶島」でひっそりと暮らしてるらしい。島には悪魔の呪いと祟りの予言があるものの、ベロニクはオノリーヌと一緒にボートで島へ。
だが島では異常事態が起こっていた。息子(10才ぐらい?)と家庭教師のマル―が発狂し、博士と料理女を射殺。さらに逃げようとした島民のボートに爆弾を投げつけ波間に浮かぶ女子どもも全員射殺。あまりに残虐。それを見たオノリーヌも発狂し崖から身投げ。
さらに隠れていた3人の老婆も殺され木に磔けされて発見。まるで「八つ墓村」のような狂った大量殺戮展開!まるでホラー映画。
島でひとりぼっちになってしまったヒロイン。(まるでトリックの仲間由紀恵)
二つの島を結ぶ地下トンネルの途中にある牢獄に閉じ込められている息子のフランソワ少年と再会。島民を皆殺しにした狂った少年は自分の息子じゃなかった!
さらに、縛られていた家庭教師マル―(ハンサム)も発見。この人は少女時代の親友マドレーヌの兄。どうりでなんとなく見たことのある顔だったわけだ。
フランソワやマル―によれば、どうやらベロニクが島に来る前日に何者かが島にやってきていきなりふたりを襲撃し監禁したらしい。敵は姿を見せないのだが、女と子どももいる。
一味はやはりデルジュモン父娘に恨みを抱くボルスキーとその先妻とその息子。その手下。邪悪な殺人鬼たち。島に伝わる伝説の宝「神の石」を狙ってる。そして悪魔の子レイノルズによってマル―は崖から転落して死亡。
ルパン(ペレンナ)はいったいいつどのように登場するのか?期待を裏切らない面白い登場の仕方だった。ユーモアのある展開だが、子どもが読むにはいろいろと残酷。
そしてこれまで放置されていた不思議な出来事をルパンが明かす終盤。「わがはいが○○したのだ」
これがそうなる?という大時代的なつっこみどころ。果たして神の石の正体とは?!
今日までのフランスのエネルギー政策の最初の一歩だったかもしれない。
なにこれ。異常に面白い。なぜ今までまったく読んでなかったのか。雰囲気が横溝正史の「三つ首塔」や「八つ墓村」っぽいと思ってた。調べてみたらこの小説は横溝正史に影響を与えたらしい。江戸川乱歩ぽくもある。
不気味で呪われた島とか、地下通路とか、そういうの乱歩や横溝の専売特許かと思ってたら、こっちがオリジナルなのか。
あと、怪盗ルパンシリーズは過去の登場人物たちも出てくるので順番に読むことが望ましい…ということがわかった。
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